同報告書によれば、調査対象とした44か国の1,491社(上場企業)では、男女間の格差が改善傾向にあるという。実際に、大手企業の幹部職で女性が占める割合は、2012年の14%から現在は19%に増加している。
この問題について12年にわたり調査を続けている同社は、次のように指摘している。「社会や文化、政治や法律など様々な側面から継続的にジェンダー問題に取り組んできた国々では、顕著に多様性が実現されている」
特に大きな進展がみられるのはイタリアとフランスだ。政府が役員の女性比率に一定数の「割り当て制」を導入した結果、幹部職の女性比率はイタリアでは8%から32%に、フランスでは21%から38%に増加した。
格差の改善が最も進んでいるのは西ヨーロッパだ。幹部職の多様性の世界平均比率が18.5%なのに対し、同地域では2004年の8%から2016年には26%に増加している。過去4年間でみると、最も改善した10か国のうち9か国が、西ヨーロッパの国だ。
だが報告書は、今後の見通しについてあまりポジティブな見解を示していない。
「ビジネスの世界において、経済的、または社会的な発展が進む一方で、特に役員レベルにおける多様性の実現は後れている」と、エゴンゼンダーのラジーブ・バスデバCEOは結論づけている。「残念ながら進展のペースは遅く、一部の国や地域では全くといっていいほど変化がない」
では、何が問題なのだろうか? その一つの原因に、各企業の幹部の“離職率”が低いことが挙げられる。
「企業のガバナンスにジェンダー多様性の効果を見るには、幹部の中に最低3人の女性ディレクターが必要だ」とバスデバは提言する。この「3人」という数字は、2006年にハーバード・ビジネス・レビュー誌がフォーチュン500企業について実施した調査において「持続可能な変革を実現するための転換点」とされている。