「人材採用」を通して企業と消費者の関係を塗り替えようと目論むのは、ヘルシンキのスタートアップ「TalentAdore(タレントアドア)」。いったいどのようなサービスなのか。共同創業者の2人にインタビューした。
─人工知能(AI)を使ったユニークなサービスを開発されたと聞きました。サービスの具体的な中身について教えてください。
サク・ヴァルカマ(以下S):私たちが開発したソフトウェアは、求人の告知から受付、応募者の評価、そして採用まで、人材採用の全プロセスをオンラインで支援します。
最大の特徴は、採用側の企業が応募者とアクティブにコミュニケーションをとれる点です。応募者は今、自分がどのプロセスにいて、今後どのように選考が進むのかがわかります。また自分が不採用となった場合にも、その理由が書かれた丁寧なメッセージが企業から届くようになっています。
普通、企業は応募者にメールを送るとき、あらかじめ用意したテンプレートを用います。だからすべてのメールが同じような文面になってしまいます。でも私たちのサービスを使えば、応募者ごとにパーソナルな情報を盛り込んで、カスタマイズしたメッセージを自動で作成できるのです。
どうやってカスタマイズしたメッセージを作れるのか説明しましょう。
「TalentAdore」のサービス上では、採用側の企業は応募者が提出した書類(職務経歴書など)を確認しながら、「動機」「性格」「有能さ」など項目別に評価のチェックを入れていきます。すると、チェックを入れるたびに、画面上で返信メッセージが自動的に書き変わっていきます。また、もし文面がしっくりこなければ、リフレッシュボタンをクリックすれば、違うメッセージに変わります。
採用側の企業の画面サンプル。応募者の提出書類をもとに評価項目をチェック(画面右)していくと、瞬時に自動で返信メッセージ(画面左)ができあがる。
─文章の作成に人工知能(AI)を用いていると?
ヨニ・ラトヴァラ(以下J):はい、「ニューラル・ネットワーク」と呼ばれるAI技術を使っています。テキスト(文章)を数学的に処理して、パーソナルで固有のメッセージを生成できるので、応募者全員が違う返信メールを受け取れます。だから、 “パーソナル”なんです。
もう少し技術的な話をすると、「Semi-Supervised Learning」(半監督学習)という手法を採用しました。文章を作成するアルゴリズムは私たちが教えて、出てきたフィードバックを点数化し、パターンを学習させました。だからアルゴリズムを学ばせてはいますが、こちらでガイドもしています。ランダムに学習させているわけではありません。
ニューラル・ネットワークは中身がブラックボックスでどうなっているかわかりません。だから出てきた文章を点数化して、ネイティブスピーカーにとってどの文章が自然で正しいかを学習させています。その点数に基づいて、AIが最適な文章を生み出しています。