同社は今後も同様に、新たなアイデアへの投資を行い、成果が上がらなければ速やかに撤退するという姿勢を維持していくだろう。米ワシントン州シアトルの地元紙「シアトル・タイムズ」によると、2010年に試験的に開始した「イブニングス」はその後、国内の439店舗にまで拡大。スターバックスはアルコール飲料の提供とメニューの一部変更で、夜間の来店客数の増加を見込んでいた。
だが、最終的にはランチタイムの売り上げを伸ばすために新メニューを導入する方が効果的だとの判断に至った。ビールとワインは今後、高級ブランド「スターバックス・リザーブ」「スターバックス・リザーブ・ロースタリー」の店舗のみで提供する。
「試す」意欲が重要
スターバックスは昨年、紅茶専門店「ティバーナ」の営業を中止。経営陣が、コーヒーショップのチェーン展開と同様の結果は望めないと判断したためだ。同社はまた、2012年に買収したベーカリーカフェ・チェーン「ラ・ブランジェ」が目標を達成できなかったことを理由に、2015年に全店舗を閉鎖。「スターバックス」に転換した。
小売業専門の電子雑誌「CPGマターズ」の編集者によれば、ブランドの拡充を目指すという点でイブニングスは、当初から失敗が予想されていた。消費者の間には「スターバックス」ブランドがあまりに深く浸透しており、ビールやワインは(ブランドのイメージに)適合しないのだという。また、米小売業界に関する情報を提供するリテイルワイヤーの顧問たちはほぼ全員が、アルコールとスターバックスはミスマッチだと考えている。
ただ、その顧問たちのほぼ全員は同時に、スターバックスの「新しいアイデアを試し、結果が出なければすぐに中止する」方針に前向きな姿勢を称賛している。顧問の一人は、「アマゾンと同じように、新しいコンセプトを試してみようという意思を常に持っている。その点には敬意を表したい」と話す。
「絶え間ない試みと試験、そして失敗によって成し得るイノベーションを通じてのみ、企業や業界は成長することができる」
別の顧問によれば、「ビジネスはカードゲームのようなものだ」という。「耐えるべきときと、降りるべきときを知っていなければならない」というのだ。そして、スターバックスの例はいかに適切に試験を行い、結果が失敗だと分かったときにいかに行動すべきかについてのケーススタディーになるという。
他の顧問らも同様に、新しいことを試し、見込みがなければすぐに引く決断をできることの重要性を指摘している。