それによるとAIの台頭により産業革命以来の変化が訪れ、人々は自動化により仕事を失う。新たな仕事に就くために別のスキルを学ぶ必要に迫られる。リポートは脅威にさらされる職種は全体の9%から47%としており、AIは単一のテクノロジーというより、テクノロジーの集合体であるため、様々な分野にまだらに浸透していくと述べている。
最初にインパクトを受けるのは自動化が容易な分野で、学歴が低い人々ほど影響を強く受けるという。リポートは特に自動運転に関して詳しくリポートしており、米国の220万人から310万人の雇用に影響するという。ただし、この数値には今後新たに創出される雇用は含まれていない。
では、AIにより創出される仕事とはどんなものなのか? 「未来の仕事」を予測することは極めて難しいが、いくつかの大まかな予測は立てている。その一つはAIの普及により、顧客とのエンゲージメントが増加し、そこに人間の手が必要になる場面が増えるケース。もう一つは、AIが業務を効率化し、より高い生産性をもたらずケースだ。
例えば、遠隔地の顧客の事務所までクルマを運転するセールスマンの場合、自動運転の登場により、運転に注意を払う必要が無くなり、その時間を販売の準備や分析に充てられるようになる。
また、AI技術の浸透により、AIの開発を行なうプログラマーの雇用は増大する。さらにAIの運用がプログラム通りに行なわれているかを監視するチームも必要になるだろう。
リポートはAIの普及により、雇用のパラダイムシフトが起こると結論づけている。自動運転が完全に普及したならば、それにふさわしい都市計画の遂行が必要になるだろう。
AI社会に対応した労働人口の育成が必要
しかし、特筆すべきはAIが生むほとんどの仕事で、教育レベルやスキルの高さが求められることだ。AIの台頭に備え、現状よりも多様性に富んだ労働力の拡大が必要であるとリポートは述べている。
「調査結果から、同質集団よりも多様性を持つグループのほうが、課題解決を効率的にこなせる」とリポートは指摘する。「そのためには科学テクノロジー分野で多様な人材を育成し、AI領域に多様な労働者を送り込むことが必要になる」としている。
未来の仕事に米国人が適応するためには、教育制度や就業訓練の改善も必要になる。全ての人々がコンピュータやデジタル機器へのアクセスを持つことも重要だ。また、大学等に限らず職場でのトレーニングの重要性も指摘されている。
最終章でリポートは、AIの普及で膨大な数の人々が失った場合、どう対処すべきかにふれている。AIによる自動化による最もネガティブなインパクトは、失業だ。これに対処するため、失業給付などの社会的セーフティーネットの増強が求められる。
各州は失業給付期間の延長や、職業訓練プログラムの導入を検討すべきだ。全体的には、今回のリポートはAIの台頭が経済的メリットをもたらすとしているが、行政側が対応を怠れば、そのメリットは全国民には行き渡らない。「自動化の恩恵を最大化するためには、行政側の多大な働きかけが必要だ」とリポートは結論づけている。