遠藤:まさに、同じスタンスでの取り組みをしています。クルマの場合は先人がものすごく努力をして産業としての流れを生み出してきましたが、陸上競技ではまだまだできておらず、パラリンピックから産業へとつながるかというと、市場の小ささから難易度は高いんです。しかし、そこにチャレンジしたいという思いはあります。
ベンチャー企業の経営者としてVC(ベンチャーキャピタル)の方と話をすることが多くあります。義足から派生したリハビリテーションのためのアシスト機器というものもプロトタイプでは作っており、実験レベルでは病院で使っていたりするんです。そちらのほうがビジネスとしては大きくなるのでは? とVCの方には言われるのですが、それでも義足を作りたいという思いが譲れないんです。
フォーブスを読まれている方には魅力的なベンチャーではないのではと思いながらも、なんとかこれを成り立たせたい。
七五三木:こうしたらお金を稼げるという商業主義的な考え方であれば、オールドエコノミーにまかせておけばいいと思います。そういう人たちが目を向けないところにも、欲している人がいる、望んでいる人がいるんだというところに光を当て「じゃあ僕がそれを作ろう」と立ち上がることに意義があり、それこそが「勇気」すなわち“Courage”ではないでしょうか。才能と高い志をお持ちである遠藤さんの挑戦を今後も応援しております。
アスリートの育成とともにXiborg製品は開発される
遠藤謙は2005年からMITにて人間の身体能力の解析やロボット下腿義足の開発に従事し、12年に博士号を取得。14年にXiborgを設立。共同経営者にはあの為末大も名を連ね、競技用義足を用いた走り方に特化した選手育成も行う。
パラリンピックやサイバスロンなどの最高峰の競技会に参加し、最先端の技術開発を行うとともに、その技術を幅広いユーザーのニーズに合わせて提供することを目指す。さらに、その取り組みをオープンにすることで障害に対する社会のマインドセットの変容を促す。
[1]眞野雄輝(古賀オール)が装着するのはロボット義足の「SHOEBILL」。ソニーコンピュータサイエンス研究所との協力により開発。膝継ぎ手にモーターやコンピュータを搭載し、人間の足に近い動きを再現する。
[2]佐藤圭太選手(トヨタ自動車)の右足に装着された「Xiborg Genesis」はトップアスリート向けの競技用義足。Xiborgに所属する3名の走りを解析し、地面から最適な力を受ける形状を選定。Genesisを装着した3名の選手を元オリンピアンである為末大がコーチとして指導。
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