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世界37カ国、700万人が愛読する経済誌の日本版

写真提供 = 松原仁研究室

AI小説家が書いた小説が、「第3回星新一賞」の一次審査を突破した。コンピュータの感性は、どこまで育ってきたのか。

“その日は、雲が低く垂れ込めた、どんよりとした日だった。部屋の中は、いつものように最適な温度と湿度。洋子さんは、だらしない格好でカウチに座り、くだらないゲームで時間を潰している。”(「コンピュータが小説を書く日」より引用)

この小説の書き手は、人間ではない。人工知能(以下、AI)だ。上記の作品は、小説を書くAIプロジェクト「きまぐれ人工知能プロジェクト作家ですのよ」から生まれたもの。これら作品の一部は、文学賞「第3回星新一賞」で一次審査を通過する実績も残している。プロジェクトを牽引する、日本屈指のAI研究者・松原仁教授(公立はこだて未来大学)は言う。

「これまで将棋AIなどを開発してきましたが、2010年以降、ある程度、人間の名人にも勝てるというゴールが見えてきて、いわゆる問題解決型AIの開発が一段落しようとしていました。そこで誰もまだ手をつけていないテーマ、感性型AIに挑戦しようと考えました。また当時、星新一氏の家族と知り合う機会があり、作品データをお借りできる幸運にも恵まれた。それが、プロジェクトが動き出したきっかけです」

現在のAIのほとんどは、ある特定の問題を分析・解決する用途で開発されている。IBMの「ワトソン」や、グーグルディープマインドの囲碁AI「アルファ碁」など、世界的に注目を集めるAIは、問題解決型AIに属する。言い換えれば、人間の理性に相当する部分を担うAIだ。

一方、松原氏らが取り組むのは人間の感情の動きを理解し、再現するAI、すなわち感性型AI開発だ。世界的に見ても、ユニークかつ独創的な研究と言えそうだが、やはり興味を惹くのは、AIが小説を書く仕組み。一体、どのようなものだろうか。

「現在公開している小説については、“コンピュータの力が2割、人間の力が8割”と説明させてもらっています。つまり、人間がストーリーを与え、AIがそれに対応する日本語を選んで文章を生成する仕組みです」(松原氏)

つまり「最初に天気の話をする」「次に主人公に話をさせる」など、物語の構成や形式を人間が与え、AIがそれに適した単語を選び、文章を紡ぐということ。

現段階では、松原氏らが想定しているAIの完成像とはほど遠いものの、作家性、つまり「その作家をその作家たらしめる作品の特徴」を抽出する研究も行っている。新たなAIは、文化の領域を拡大する可能性を秘めている。

「現在、我々は星新一氏の他にも、小松左京氏の作品を分析しています。作家の作品性を抽出できれば、まるでその作家が書いたかのような作品を生み出すことができるようになるかもしれません」

松原氏と小松氏の家族は、未完の大作『虚無回廊』の続きをAIに書かせるという未来を語り合うこともしばしばだそう。これらの技術が発達すれば、将来的にはAIが読み手個人が好きな作家性・文体を分析して、カスタマイズされた小説を書いてくれる日が訪れる可能性もある。松原氏は言う。

「それは私小説ではなく、“個”小説と呼べる新たなジャンルの創作物になるでしょう」


松原 仁(まつばら・ひとし)◎公立はこだて未来大学教授。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。『コンピュータ将棋の進歩』(編著・共立出版)、『わくわくロボット教室』(監修・集英社)など著書多数

文=河鐘基

 

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