ここにビジネスチャンスを見出したのが、中国人の起業家マックス・ウー(36)だ。ウーは2年前にヘッドホンメーカー「Vinci」を北京に設立。世界で最も野心的なヘッドホンの開発に取り組んでいる。「Vinciのコンセプトは、頭に乗せるロボットです」とウーは話す。
突拍子もない話にも聞こえるが、VinciにはSiriのような音声AIアシスタントが搭載されており、所在地の把握やウーバーの配車手配、受信メッセージの読み上げ、天候の通知、心拍数の計測、走行距離の測定、レストランの予約、ナビゲーションなどが利用できる。操作は音声がメインだがタッチパネルも搭載している。
16ギガHD内蔵、スマホ無しで音楽が聴ける
VinciはAndroidベースのOSを搭載し、Wi-Fiに接続可能。SIMカードスロットが搭載されており、データ通信SIMを挿入すれば単体で動作する。スポティファイのアプリをダウンロードして使うこともできる。Vinciは製品化に向けて今月キックスターターで出資を募り、目標額に到達したばかり。正式リリースは来年3月になる見込みだ。この製品は現在、キックスターターで99ドルで販売中だ。
「AIの進化によって、我々は重要な転換期を迎えています。5年、10年後にはSFのような世界が実現しているでしょう」とウーは言う。
筆者はVinciのデモ機を使用してみたが、手に取るとずっしりと重みを感じる。外観は「Beats」のヘッドホンによく似ており、頭の上部に触れる部分に柔らかいクッションが付いている。形状は長方形でBeatsとは異なる。Vinciの「公式カラー」はイエローだが、欧米の男性にはブラックの方が人気になるかもしれない。
完成品では、音声AIアシスタントが常時オンになり、心拍数をリアルタイムで測定することができるという。また現状でも既にSiriやグーグルの音声アシスタントを使うのと同じ要領でVinciとやり取りをすることができた。
例えば、ロックバンド「Weezer」の楽曲が聴きたいと話すと、スポティファイが起動して「Island in the Sun」が流れた。イヤーカップのタッチパネルをスワイプすると、曲をスキップすることもできる。音声操作でのナビゲーションにも対応を予定している。内蔵ストレージは16GBもあるので、USB経由で音楽データを保存して持ち歩くことも可能だ。
ウー(右)と共同創業者のデビッド・チュー(左)