日本企業が参考にすべき「GEジャパン」のマネジメント手法

GEジャパン、熊谷昭彦CEO(Photo by Irwin Wong)

GEが持つ革新的な“戦略と仕組み”を日本でいかに実践するか。“リーダーシップと文化醸成”でこれを成し遂げたGEジャパンには日本企業が参考にすべきイノベーション・マネジメントの姿がある。


創業約140年、従業員数30万人。グローバルトップ企業、米ゼネラル・エレクトリック(GE)。これまで「ワークアウト」「シックス・シグマ」といった問題解決手法により経営を推し進め、イノベーションを起こし続けてきた。変化が速くかつ激しい経営環境の中、GEが2012年頃から導入しているのが「ファストワークス」だ。文字通り「素早く動く」を意味する、新たな製品開発プロセスだ。重厚長大企業を代表するGEの経営の中にシリコンバレー企業のスピード感を埋め込む革新的な取り組みだ。そんな新たなマネジメント手法が、イノベーションを起こすための“基礎”を構築する。

ー「ファストワークス」の導入に、経営者として躊躇はなかったか。

躊躇がなかったと言えば嘘になる。しかしそれ以上にショックだったのは「危機はそこまで来ているのか」という現状認識だ。実際に、我々の競合相手は、従来の重電企業から米グーグルや米アマゾンになりうる社会に変わってきている。市場環境の変化に対応するには我々も変わらなければならない。ITカンパニー的な考え方や組織づくりから逆に学ばなければならないことも多い。

ファストワークスはチャンス

ー短期利益中心の既存組織の中で長期ビジョンに基づく新しい取り組みを導入するのは簡単ではない。GEではスムーズに進んだか。

こうした変革はいつも「危機感」から生まれる。ただGEジャパンの中では、むしろファストワークスは「チャンス」と捉えて導入をリードした。グローバルで日本の存在感が低下する中、いい機会になるのでは、と考えたのだ。というのも、中国やアフリカなどの巨大市場と比較され、日本からの革新的な新製品の提案が日の目をみないことが多く、悔しい思いをしてきた。小さく、早く、少しずつスタートし、うまくいきそうならまた次のステップへというアプローチは、初期投資も少なく済む。そのため、これまでとは違い、「ちょっとでも面白ければ、まずやってみよう」となる。結果が出ればグローバルに展開できる。それは市場規模で負けていた日本には最大の武器になる。だから「ファストワークスという仕組みは日本にとってチャンスだ」と社員の意識付けをうまくできれば、高いモチベーションを引き出せると考えた。
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編集 = Forbes JAPAN 編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.28 2016年11月号(2016/09/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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