日本企業が参考にすべき「GEジャパン」のマネジメント手法

GEジャパン、熊谷昭彦CEO(Photo by Irwin Wong)


ー「チャンス」と捉えることから、どのような成果につながっているか?

こうしたファストワークスの組織への浸透は、“優等生”と言われがちな社風を改革するきっかけにもなる。品質管理をはじめ完璧を目指す組織文化を意識的に改革する際にボトルネックと考えたのは、成功体験を持つ中間層。ファストワークスでは、その仕組みを導入するだけでなく、私自身が意識的に若手をモチベートし、若手主導で「ファストワークスでやりましょう」と中間層をたきつけさせた。実際にファストワークスによる成功事例が生まれると、中間層の意識も少しずつ変わっていくという好循環が生まれた。

14年からは「ファストワークス・エブリデイ」という、あらゆる日々の仕事、業務プロセスにもファストワークスを広げるトレーニングも始まった。これまですでに社員の3分の1の1,000人以上がトレーニングを受けている。その数は世界を見渡しても、日本がずば抜けて1位である。

ー15年にはソフトウェア企業を標榜し、新組織・GEデジタルを立ち上げた。会社全体でも大きな変革を進めているが、これをどう捉えたのか。

「デジタル・インダストリアル・カンパニー」もファストワークス同様に危機感から生まれた。もちろん「危機感が現実である」ということをしっかり伝えないといけない。とはいえ「過去についてリスペクトすること」も同様に重要である。

私の解釈も含むが、GEが目指すのは「デジタルなインダストリアル・カンパニー」であり、「デジタル・アンド・インダストリアル・カンパニー」ではない。我々が目指しているのは、ソフトウェアカンパニーに変わるというのではなく、これまで築いてきたハードウェアでの強みを基本に、時代に合ったソフトウェアを“足す”ということだ、という伝え方をしている。

ーそういった捉え方にトップのリーダーシップがあると感じる。
 
変革において重要なのは「大義」であり、実は、殺し文句は「日本のために」。GEはGEの強み、日本は日本の強みを持っていて、誇りを持っている。それを生かして上乗せする発想をいかに促せるかが重要だ。


GEジャパン◎世界170カ国以上の事業拠点で30万人の社員が働く米GEの日本法人。1999年にGEジャパン・ホールディングスとして設立され、日本におけるさまざなGEの事業会社を統合して現在の形になった。「課題大国」日本の諸問題をさまざまな切り口で解決することを使命としている。

熊谷昭彦◎(くまがい・あきひこ)◎1979年、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校経済学部卒業。三井物産をへて84年にGE入社。GEのコーポレートオフィサー(本社役員)就任をへて、2014年にGEジャパン代表取締役社長兼CEOに就任。

編集 = Forbes JAPAN 編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.28 2016年11月号(2016/09/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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