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2016.11.12

自動車保険業界を破壊するフィンテック企業「メトロマイル」の躍進

Daniel Diebel / gettyimages

フィラデルフィア在住のスーザン・ギボンズは、30年間に渡り大手保険会社「ステートファーム」の自動車保険に加入していた。彼女は何度か担当者に電話をし、保険料を下げる交渉を試みたが、毎回きっぱりと断られた。

割高な保険料を払い続けることに苛立ちを覚えた彼女は昨年、グーグル検索で「メトロマイル(Metromile)」という新興の保険会社を見つけた。現在の保険料は、以前より年間720ドルも安くなったという。

メトロマイルは、走行距離に応じた自動車保険というビジネスモデルを掲げ、市場規模2,000億ドルとも言われる自動車保険業界に参入。1億9,200万ドル(約204億円)の資金を調達し、フォーブスの「世界のフィンテック50社」にも選出された。

メトロマイルは、2011年にデビッド・フライドバーグによって設立された。現在35歳のフライドバーグは、かつて農家向けの気候予測サービスを手掛ける「Climate Corp」を立ち上げ、2013年にアグリビジネスの大手企業であるMonsantoに10億ドルで売却した経験を持つ。

カリフォルニア大学バークレー校で天体物理学を学んだフライドバーグは、地球温暖化対策の一つとして従量制自動車保険を思い付いた。走行距離が短いと保険料を節約できるのであれば、多くのドライバーが運転頻度を減らすと考えたのだ。

しかし、メトロマイルが訴求するのは、あくまで保険料の安さだ。同社によると、ドライバーの65%が年間11,000マイル(約17,700キロ)も運転してないという。

競合のガイコやプログレッシブらも類似したビジネスモデルで事業を運営している。ガイコは、車両にデバイスを装着し、ドライバーの運転習慣を測定し、危険運転を行なうドライバーは保険料が高くなる。これに対し「メトロマイルは走行距離しか測定しない点が他社との違いだ」と同社のダン・プレストンCEOは強調する。メトロマイルは車載デバイスが収集したデータをモバイル通信で自社サーバに送信している。
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編集=上田裕資

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