ウーバーのドライバー保険にも採用
プレストンはスタンフォード大学出身で、かつて決済サービス会社を設立し、2012年に1億ドルでイントゥイットに売却した。根っからのテクノロジーおたくである彼は、CTOとしてメトロマイルに参画し、2014年にCEOに就任した。
サンフランシスコにあるメトロマイルの本社でインタビューに答えたプレストンは、他の保険会社との違いについて熱く語った。「メトロマイルの強みは、ビッグデータ解析に基づく保険リスクの評価だ。他社の場合、データ解析は補助的な機能に過ぎない」と述べた。
プレストンは、2014年に大学のクラスメートで、現在はウーバーの保険部門の責任者を務めるガス・ファルドナーに連絡し、両社の提携について協議を開始した。そして昨年、メトロマイルはウーバーのドライバー向けに従量制自動車保険の提供を開始した。従来の保険では、配車サービスを行っている間は保険が適用されないことが多く、ウーバーにとっては大きな課題となっていた。
メトロマイルは、この秋に伝統的な保険会社であるMosaicを買収し、保険引受から保険金請求の処理まで、全ての業務を自前で行う体制を整えた。
メトロマイルは現在、カリフォルニア州、イリノイ州、ニュージャージー州、オレゴン州、ペンシルベニア州、バージニア州、ワシントン州でサービスを提供しているが、今後はニューヨーク州やテキサス州、フロリダ州への拡大を計画している。
メトロマイルが目指すのは、自動車保険版の「コード・カッティング」だ。コード・カッティングとは、ミレニアル世代を中心に増えている、ケーブルテレビの契約を解約してネットフリックスなどのオンライン動画ストリーミングサービスに加入する行動を意味する
しかし、ドライバーが現行の保険契約を解除するのは容易ではない。冒頭で紹介したギボンズがステートファームとの契約をキャンセルしようとしたところ、彼女が同社と契約していた住宅所有者保険の保険料が数百ドル値上がりすると告げられたという。結局、彼女は住宅所有者保険も解約し、別の保険会社に乗り換えた。
大手保険会社の中には、メトロマイルのような新興保険会社と手を組もうと考える企業が出始めている。カナダの損害保険大手インタクト・ファイナンシャルや中国太平洋保険は、メトロマイルに出資をしている。メトロマイルの株主には、他にもビリオネアのマーク・キューバンをはじめ、ベンチャーキャピタルのNew Enterprise AssociatesやIndex Ventures、First Round Capitalなどが名を連ねている。
環境保護は同社の理念としてしっかり根付いている。メトロマイルは今年のエイプリルフールに「歩行者を歩数に応じて保護する新しい保険の提供を開始する」とのプランを発表した。実際に歩数を計測するのであれば、フィットビット(Fitbit)と手を組むのが賢明かもしれない。