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2016.11.16

「財務」を経営の武器にしている日本企業10選

illustration by Peter Greenwood - Folioart.co.uk


CFOおよび組織に期待される役割は、デロイトの「4Face of CFO」というフレームワークを用いて、説明できる。CFOの役割は次の4つだ。(1)オペレーター(取引処理の実行)、(2)スチュワード(統制環境の整備)、(3)ストラテジスト(戦略立案への参画)─、(4)カタリスト(戦略実行の推進)─。前者(1、2)は、守りの役割であり、どの企業の財務組織も通常行うことだ。日本企業の財務組織に不足しているのが、後者(3、4)の攻めの役割である。

「守りの効率化により余力を生み出し、攻めへのリソースシフトが求められる。特にビジネス部門との連携により企業の成長力や競争力の強化に貢献するケイパビリティの構築に充てる。組織として攻めと守りの役割をバランスよく両立させる力量を持ったCFOがCEOのパートナーとして経営をリードしていく」(日置)

「フォーブスジャパン」編集部が、今回選定した基準は、ファイナンスは“飛び道具”ではなく、経営資源の配分にいかに貢献するか、という観点から、(1)グローバル対応や高機能化などを狙った組織構築、(2)CEOをはじめビジネス側との連携による企業価値への貢献、(3)IRや資金調達などの資本市場との対話─、という3つの視点だ。

例えば、日立製作所は、企業全体で進める「非連続の組織改革」への関与といったビジネス側との連携を評価した。花王については、絶えざる革新を続ける組織を評価。トヨタ自動車は、資本市場との対話という視点だ。15年7月に発表した新型種類株は投資家を選ぶ新たな手法を導入している。ソニーは事業構造変革の支援と資本市場との対話を考慮。村田製作所は経営企画まで含めたバランスある組織作りを評価。エーザイはCFOのファイナンス理論など選定理由は様々だ。

「日本企業の特徴は『阿吽の呼吸』で情報を集め、共有しながら、経営してきたところ。グローバル企業は『阿吽の呼吸』では意思疎通が図れないため、情報収集や共有、様々なレベルの判断に必要なルールやプロセスを仕組み化した。『阿吽の仕組み』だ。日本企業が真にグローバル化を志向するのであれば、CFOが主導してこの仕組みを構築すべきだ」(日置)「経営環境の変化が激しい中、財務の技術スキルよりも変化に対応できるリーダーシップが必要になる」(谷口)

日本企業のCFO及び財務組織は今、大きな転換点にある。

選考に協力いただいた方々

谷口宏◎日本CFO協会専務理事・事務局長。CFO本部社長。1989年東京大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)入行。2000年日本CFO協会を創設、専務理事に就任。国際財務幹部協会連盟(IAFEI)評議員。

日置圭介◎デロイト トーマツ コンサルティング 執行役員パートナー。早稲田大学大学院会計研究科非常勤講師。日本CFO協会主任研究委員。著書『ファイナンス組織の新戦略』。

編集 = Forbes JAPAN 編集部

この記事は 「Forbes JAPAN No.28 2016年11月号(2016/09/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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