テクノロジー

2016.10.29 18:00

データ活用が教える「活躍する人、辞める人」

Syda Productions / shutterstock


2015年、アメリカ国内のHRテック企業は400社に迫り、評価額が10億ドルを超えるユニコーン企業も目立っている。
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慶應大学大学院の岩本隆准教授は言う。

「ここ数年、アメリカで盛り上がってきたHRテクノロジーの波が、数年遅れで日本にも到達した」

しかし、日本でHRテックが普及するためには、日本ならではの課題もある。アメリカでは、個人のキャリアは、ひとつの仕事と結びついており、会社を移動しても、同じ職種で働く場合が多い。
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しかし、日本の人事システムは、「就職」よりも「就社」、かつ「個人」より「組織」という考え方に立って形作られてきた。そのため、アメリカよりもより複雑な“方程式が”必要となる。前記事で、松尾豊教授が「子供のAI」で日本には勝ち目があると指摘しているが、まさに「子供のAI」の進化こそが、この方程式を解くカギになるのではないだろうか。


各社のHRテックの取り組み

Oracle
オラクルのHRサービス「Oracle Human Resources」はWebベースのアプリケーションで、通信、開発、評価および給与など、人事関連の機能を集約したシステムだ。従業員の能力を最大限に活かすために必要な重要なスキルと情報を体系的に収集、活用できるのが特徴。人材の募集、採用、予算の立案、給与支払い、退職、パフォーマンス、スキル、労働協約といった、人事業務をグローバルに検索、管理ができるようになっている。

SUSQUE
SUSQUEの「サブロク」は、データ分析を通して企業の健康経営をサポートするクラウド型人事・労務管理サービスだ。労働時間の管理不足や労働環境のミスマッチが招く、高退職率・精神疾患の発症といった課題をデータ分析で解決する。勤怠データをAIが解析。同僚でも気づくことが難しい、出勤・退勤時間の微妙な変化、残業時間の多寡、有給休暇の取得回数の状況などから、従業員の4~5カ月後の退職確率を週次で高精度に予測する。

Institution for a Global Society(IGS)
IGSは今年2月から、グローバル人材の評価・育成事業「GROW」をスタートさせた。応募者の価値観や、職業に必要な能力を診断する機能もこの秋から始まった。GROWは、学生に対する周囲からの客観的な360度コンピテンシー評価と、潜在的性格診断に基づいて、AIがコンピテンシー評価情報と、企業が求める人材像のマッチングを図る。理想のキャリアプランを実現するために、現時点で不足している能力を提示するなど、能力開発の機能も備える。

––IGS 福原正大CEO談
「今年2月のサービス開始以降、DeNAや楽天、朝日新聞社、アクサ生命といった大手企業がGROWを採用活動で利用している。大手総合商社では、アジアの新卒採用でGROWを活用。世界の人材を横並びにして評価できる点が支持されている。日本人・ベトナム人学生のアクティブユーザー数は約4,000人。年内に1万人を目指す。今年9月には東京大学エッジキャピタル(UTEC)らより総額3.5億円の資金調達を実施した」。

WORKS APPLICATIONS
ワークスアプリケーションズが開発した和製ERPパッケージの「HUE(ヒュー)」は、AIを搭載したERPシステムとして注目されている。AIやビッグデータ解析を組み込み、企業内に蓄積された膨大なログデータを解析・学習。ユーザーが欲しい情報を先回りして提案したり、入力や作表のような単純作業やルーティンワークを削減する。すでに鹿島建設、成城石井、商船三井グループといった大企業のほか、近畿大学などでも採用されている。

––ワークスアプリケーションズ 牧野正幸CEO談
「コンピュータにできることが増えるにつれ、コンピュータのために人間がやらなければいけない仕事も増えました。大量のデータ入力などがその例です。そうした中で、新しいことを考えたり、重要な決断をしたりするための時間を、“コンピュータの操作”に奪われています。「これくらい、コンピュータがやってくれたらいいのに」と思っていた作業を人工知能に任せることで、私たち人間は本当にやるべき仕事に注力できるようになるのです」。

文=大木戸 歩

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