ルノー・日産アライアンスは9月13日、2010年12月の日産「リーフ」発売以来、EVの累計販売台数が35万台を突破したと発表した。アライアンスはまた、2015年8月からの1年間でEV10万台を販売するという業界記録も打ち立てた。日産はリーフに加え、小型商用バン「e-NV200」を販売。ルノーは「ゾエ」とバンの「カングーZ.E」、セダンの「SM3 Z.E」、市街地用2人乗りEV「トゥイジー」を販売しており、こうした幅広いラインナップがアライアンスの強みとなっている。
EV業界では、テスラが今年の生産目標台数である9万台を達成できるかに関心が集まっている。その一方では見過ごされがちなのが、同社が戦略的に最も重要なEV市場である欧州連合(EU)加盟各国と中国で大手自動車メーカーに後れを取っていることだ。
中国政府は厳しい排ガス規制や補助金政策を通じて、EVの普及を強力に推進。 EUではフォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題「ディーゼルゲート」を契機に、自動車メーカー各社が環境対応の柱をディーゼルエンジンではなく、EVやPHEVとする戦略に舵を切っている。
そうした中で、今年1-7月期のEV販売台数は中国が16万1,216台、EUが11万2,144台となっている。一方、米国は7万8,179台と、ガソリン価格下落の影響により前年同期の11万6,099台から大きく落ち込んだ。
テスラは戦略を誤った?
EVで大手自動車メーカーに打ち勝とうとしてきたテスラだが、世界の重要なEV市場では、逆にそれら各社に水をあけられている。販売台数は伸びたとしても、テスラは独占を目指した市場で本格的な大量生産を開始する前に、すでに急速にシェアを失っているのだ。
縮小する米国市場に注力したことで、テスラは同国よりもはるかに規模の大きい成長市場の中国とEUにおいて、新たな市場にいち早く参入したことで得られる「先行者利益」を失ったのだ。欧州で最も売れているのはテスラの「モデルS」ではない。ルノーの「ゾエ」だ。
EVに関する情報を提供するEVオブセッション(EV Obsession)によると、EUの今年1-7月期のEV販売台数はルノー・日産が2万8,501台で首位、驚くことにVWは2万2,296台で2位にとどまっている。テスラは7,469台で、6位だった。今後、欧州の大手自動車メーカーがEVの生産を加速させれば、テスラのシェアはさらに縮小するだろう。
一方、中国ではテスラの存在感はさらに薄い。同国のEV市場は国内メーカーが握っており、ブログ「EVセールス(EV Sales)」によると、広東省深セン市に拠点を置くBYDは今年1-7月、テスラが昨年一年間に世界中で販売した台数を上回る数を売っている。