ただし、ヴィヴィントのユニークさは、この営業軍団だけではない。そのビジネスモデルも成功の一つの要因で、シリコンバレーの多くのスタートアップとは好対照をなしている。
シリコンバレーでは、最先端のガジェットの開発者たちが、その性能やプロダクトデザインでしのぎを削る。だが、スマート・ホームを実現するために、こうしたデバイスを売ろうとすると、消費者に敬遠されてしまう。一つひとつのガジェットが高額になりがちだからだ。そこでヴィヴィントは、顧客の家にまとめて設備を導入し、月々の利用料を受け取るモデルを採用した。
各家庭に導入するガジェット類のコストは、平均1,500ドル相当。自社開発の製品もあるが、アマゾンやネストといった他社製品も組み合わせて提供する。顧客は利用料として、年間480〜960ドルを支払う。
こうしたモデルは投資家からも注目されている。
2005年にはゴールドマン・サックスなどがヴィヴィントの株式の50%を取得、12年にはブラックストーングループに20億ドルで買収された。最近では、ペイパル創業者で投資家のピーター・ティールなどが、1億ドルの資金を出している。
調査会社のフォレスターは、米国内の家庭の5%がスマート・ホーム関連のガジェットを所有しており、21年にはこの割合が16%まで伸びると予測している。アルファベット、アマゾン、アップル、サムスンといった世界の名だたるテック企業も今、スマート・ホーム分野で大きな賭けに出ている。
ただし、すべてがうまくいっているわけではない。注目度は高いものの、ヴィヴィントのビジネスもまだ黒字化に遠いのが現状。15年の実績では、6億5,000万ドルの売り上げに対し、営業損失が7億6,000万ドルとなっている。
だが、同社の共同創業者でCEOのトッド・ペダーセンは期待を込める。
「今後の消費者の生活の変化を見れば、とても有望なビジネスなのです」