日本ではフィーチャーフォンが全盛だった2004年以来、あらゆるものが携帯端末で購入可能で、一部の人は財布を持たずに外出していたほどだ。アップルはこのトレンドにようやく追いつこうとしている。
しかし、そもそも何故アップルはこの動きを開始したのか。その理由の第一に挙げられるのが、世界のスマートフォン市場で、アップルがサムスンや中国ブランドのシェアを奪われていることだ。アップルが日本で決済分野の対応を広げることで、iPhone 7の売上を後押ししたい狙いがあるのだ。
「日本には成熟したモバイル決済文化があり、アップルが同社のサービスを日本向けに適応させることは理にかなっている」と調査企業HISテクノロジーのジャック・ケントは述べる。「アップルにとって、ユーザーらの取り込みはさほど難しいことではありません」
2011年のアクセンチュアの報告によると、日本のモバイルユーザーの33%が携帯電話での決済を利用したことがあり、47%がモバイル決済に好感を持っている。この数字はヨーロッパや米国以上だ。日本のモバイル決済市場は、2004年に主要キャリアのNTTドコモがモバイルFeliCaを交通機関用に導入した頃から開花した。
市場調査企業Strategy Analyticsは2016年の末までに、約3,200万人のスマートフォンユーザーが非接触型のモバイル決済を利用し、決済金額は153億ドルに及ぶと予測する。決済ボリュームは2021年までに現状の倍に達すると見込まれるが、Strategy Analyticsはアップルペイの登場によりさらにこの金額は増加すると見ている。
第2の要因として、日本では他の諸国に比べアップルが競合のアンドロイドよりも優位な点だ。アップルペイは技術的にも強固な決済手段であり、iPhoneが決済情報を読み取り、決済情報を送信する。「アップルペイはユーザーにとって初期設定が簡単で、指紋認証システムも搭載しているため安心して使い始められる点もメリットになります」とStrategy Analyticsの担当者は述べる。
最後に挙げられるのが、この分野に遅れて参入することが、アップルにとってメリットとなる点だ。日本ではすでにモバイル決済の仕組みが確立されており、アップルは既存の金融期間と面倒な交渉をする必要もなく、ユーザーにその便利さを説明する必要も無い。既に他国で実績をあげたアップルペイの日本市場への参入はスムーズに行くだろう。
日本市場への参入がアップルに利益をもたらすことは確実だ。アップルがアップルペイを日本市場に適合させることは、非常に理にかなった選択といえるだろう。