中国の新シルクロード(一帯一路)戦略とモンゴルの“草原の道”、ロシアの大陸横断交通を結合し、中国の交通ネットワークをロシア、モンゴル両国につなげる新たな経済回廊の構想は、6月に実現に向けて動き出した。その最終的な狙いは、経済と政治の結びつきを強化し、互いに恩恵のあるインフラプロジェクトを通じて3か国間の貿易を増やすことだ。
アジアの中心部にあるこの3国は、経済的な結びつきが強く、昨年1年で中国、ロシア、モンゴル間を運ばれた貨物は246億トンに達する。モンゴルの輸出額の80%以上は中国向けで、輸入額の3分の1は中国からのものだ。IMFの2012年のレポートによると、モンゴル経済の4分の3は、中国と関連している。中国はロシアにとっても最大の貿易国で、年間の輸出額は約400億ドル(約4兆円)、輸入額は約500億ドル(約5兆円)となっている。
中国、ロシア、モンゴルは8月中旬、経済回廊を想定したトラックの走行テストを行った。中国・天津を出発した3か国の9台のトラックは、11都市に停車しながら7日間で2,152キロを走行し、最終目的地のシベリアのウラン・ウデに到着した。
ユーラシアを横断する交易ルートを強化
来年1月5日に発効するTIR条約への加盟は、この経済回廊のキーとなる。ロシアとモンゴルも同条約のメンバーであるため、トラックは1回の税関審査だけで経済回廊を通行できる。国境通過に要する手間がなくなることで、輸送時間は大幅に短縮されるだろう。
陸路の輸送コストは空路の10分の1ほどで、鉄道に比べ多目的に使える。中国の英字紙チャイナデイリーによると、20トンの貨物をトラックで中国南部の広西チワン族自治区からロシアに送るコストは約4,000ドルで、コスト的にはコンテナ一つを中国からヨーロッパに鉄道輸送するのと同じだが、貨物の積み替えの手間がない分、スピードにはやや勝るという。
中国は台頭する内陸都市や工業地帯を連結するために、ユーラシア大陸を横断する貿易ルートの強化を計画している。中国は最終的にユーラシア大陸の道路、鉄道、川、海、空港が結ばれるマルチモーダルな交通網の構築を目指している。西ヨーロッパ-中国西部高速道路、カザフスタン国境のコルガスやポーランドのMalaszewiczeのような巨大で新しいドライポート、そして新しい産業地帯といった大規模なプロジェクトを、全てこの貿易ルートでカバーしようとしている。
交通ネットワークの構築は、中国の新シルクロード計画の第一フェーズに過ぎない。一帯一路は単なる交通網の再構築や強化ではなく、最終的にはユーラシア大陸の両端間の戦略的な位置にある様々な経済拠点を押さえる経済回廊のネットワーク構築である。すべての道は中国に通じるのだ。