ビットコインに使われる分散型台帳テクノロジー「ブロックチェーン」が脚光を浴びている。『仮想通貨の時代ービットコインやデジタルマネーは世界経済秩序にとって、いかなる挑戦なのか』(未邦訳)の共著者で、元「ウォール・ストリート・ジャーナル」記者、現在はマサチューセッツ工科大学(MIT)メディアラボ「デジタル通貨イニシアチブ」のシニアアドバイザー、マイケル・ケーシーに話を聞いた。
ー昨年出版された共著書『仮想通貨の時代』について教えてください。
マイケル・ケーシー(以下、ケーシー):デジタル通貨というテクノロジーがなぜ非常に重要なのか、世界経済秩序にとって、いかに大きな挑戦となるのかを示したかった。社会・経済統治の点から言えば、これまでとはまったく違うパラダイムが生まれることになる。本では、ビットコインとブロックチェーンが挑む問題、つまり、銀行や政府など、第三者によって担保される「信用」という問題を克服するにはどうすればいいか、その核心に迫ったつもりだ。
デジタル通貨という非中央集権的で分散化されたシステムの下では、第三者に依拠することなく、当事者間で情報確認ができるため、手数料がかからず、効率的に取引できる。だが、もっと重要な点は、個人に権限が与えられることで、P2Pや情報管理が可能になることだ。
インターネットが世界をフラット化し、より多くの人々が競い合えるようになったが、金融システムの中央集権化という問題は解決されずじまいだ。しかし、インターネットの第2波を迎え、デジタル通貨という新プラットフォームが生まれた。
ーアフガニスタンでも、デジタル通貨が使われているようですね。
ケーシー:発展途上国では、身元証明ができないために銀行口座を持てないことが多いが、アフガニスタンには文化的問題もある。女性が銀行口座を持つのは難しいからだ。「許可」が要らないビットコインなら、女性も送金手段という権限を手にできる。金融手段にアクセスできなければ、世界経済にも参加できない。
ビットコインは、財産所有権の観点からもとらえられる。発展途上国では資産や家を持っていても、登記機関がうまく機能していないため、証明できず、銀行から融資してもらえない場合が多い。だが、ブロックチェーンを使えば取引が逐一記録され、誰にも取り消せない。途切れることがない、不変の「記録のチェーン(鎖)」として活用できる。