ー5月には米ブロックチェーン技術開発ベンチャー、Chain.com(チェーン・ドットコム)がオープンスタンダードを発表するなど、さまざまな動きが見られます。
ケーシー:チェーンはナスダックと提携し、複数のプロジェクトを進めている。米系企業主導の下、分散型台帳のオープンスタンダード構築というブロックチェーンの標準化を目指す「ハイパーレジャー・プロジェクト」も進行中だ。即時グロス決済システムの米ベンチャー、リップルは、違うネットワーク間の台帳同士をつなぐ「インターレジャー」プロトコルを発表。ブロックチェーン開発ベンチャーのパイオニアであるR3による「コンソーシアム」には複数の銀行が加盟し、金融機関におけるブロックチェーンの活用法を探っている(編集部注:6月現在、日米欧など45社超が参加)。
オープンソースの開発環境における変化のペースは速く、銀行が追いつくのは至難の業だ。今は銀行が金融システムを支配しているため、今後の変化もコントロールできると考えている。だが彼らも、システムの分散化を進め、非許可制のオープンソースモデルに変えないかぎり変化についていけないことに、いずれ気づくかもしれない。
ーデラウェア州でブロックチェーン・イニシアチブが発表されるなど、政府レベルでのプロジェクトも始まりました。
ケーシー:同州は、多くの企業が登記しているため、記録管理の点では全米で最も重要な州の一つだ。企業が発行株式などの記録を管理するのは非常に難しいが、分散型台帳でデータ変更が自動的に記録されるような環境づくりを目指している。
ー現在、最も注目している動きは?
ケーシー:IoT(モノのインターネット)とエネルギー市場、ブロックチェーンの相互作用だ。世界はエネルギーの分散化へと向かっている。効率性を維持しつつ環境への影響を抑え、分散的な方法で再生可能エネルギーを利用する。何百万という地域が、非中央制御型高性能デバイスで地域ごとに電力網を築き、誰からのコントロールも受けないやり方でエネルギーを共有するのだ。
そこで、分散化エネルギー・インフラをどう構築するかにおいてブロックチェーンが重要になってくる。これはIoTのコンセプトと同じだ。高性能デバイスでスマートグリッド(次世代電力網)を築き、データをブロックチェーン上に記録する。資金調達では、ビットコインによるスマートコントラクト(プログラムによる自動・自律的契約)や再生可能エネルギー証券などを活用する。
もう一つ注目している動きは、 ブロックチェーン上に構築されたデジタルの分散型自動化組織(DAO)だ。経営者がいない分散化構造の下で、クラウドファンディング史上2番目に多い資金調達に成功した。会社定款ではなく、ソフトウェア上の規則に基づく自律的組織だ。