ーイングランド銀行が独自のデジタル通貨開発に乗り出したそうですね。
ケーシー:詳細はわからないが、ビットコインよりは中央管理型のものになろう。中央銀行がビットコイン・ブロックチェーン型の通貨を発行するとは思わないが、従来の銀行システムの枠を超え、個人がイングランド銀行からデジタルポンドを買えるようになるかもしれない。商業銀行は不要になる。まだごく初期の段階だが、極めて重要な動きであり、銀行システムの力学が大きく変わるだろう。
というのも、ビットコインなどの登場で中央銀行も競争を迫られているからだ。現行の銀行システムは破綻しているという認識も行き渡っている。中央銀行がデジタル通貨を発行すれば、商業銀行への手数料が浮くことで、個人間の送金件数が増え、経済も活性化する。
ー日本で日銀がデジタル通貨を発行した場合、どのようなプラス面が考えられますか。
ケーシー:あくまでも理論上の答えだが、紙幣が廃止され、デジタル通貨のみの世界になれば、マイナス金利政策の効果が上がる。デジタル通貨の場合、マイナス金利の下では元本の価値が減るため、預金を引き出して使うほうが得策だからだ。その結果、より効果的な消費拡大が望める。
ーデジタル通貨やブロックチェーンは金融の概念を変えると思いますか。
ケーシー:もちろん。銀行システムにおける「マネー」の意味を変えうる。人々がデジタル資産を持ち、マネーがプログラム化され、デジタルの評価システムが用いられる世界が訪れるかもしれない。
Michael Casey(マイケル・ケーシー)◎マサチューセッツ工科大学メディアラボ「デジタル通貨イニシアチブ」のシニアアドバイザー。