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ニューヨーク在住ジャーナリスト / NYC-based Journalist

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空前のAI(人工知能)ブームはウォール街をも席巻している。高頻度取引業者が株価を操り、AI取引型ファンドが高リターンを記録する時代ー。「ウォール街のアルゴリズム戦争」でコンピュータ取引の実態を描いた、「ウォール・ストリート・ジャーナル」紙記者でベストセラー作家のスコット・パタースンがAI取引の現実を語る。

ーウォール街の最前線では、どのような“アルゴリズム戦争”が展開されているのでしょう?著書出版後、この3年間で変わった点はありますか。

スコット・パタースン(以下、パタースン):状況が過熱していることは確かだ。高頻度取引を批判的に描いた、マイケル・ルイスの『フラッシュ・ボーイズ』(2014)を機に、この問題に注目が集まり、激しい賛否両論が巻き起こるようになった。高頻度取引反対論者と高頻度取引業者の間で議論が二極化しているのだ。

ウォール街での最も大きなテクノロジーの進歩は、私の著書が世に出る前にすでに起こっていた。市場の革新的進化は1990年代にさかのぼる。ウォール街の超天才プログラマー、ジョシュア・レビンが生み出した「アイランド」という電子プール・システムだ。

強力なコンピュータを備えたデータセンターを取引所内に設置。トレーダーらのサーバーをそこに置き、トレーダーが仲買人を経ずに売買できる「コロケーション」と呼ばれるサービスを提供した。このシスステムは世界中で採用されている。すべての革新は彼から始まった。

現在、白熱した議論がなされているが、大半の人々にとって、それは、コンピュータ取引の善悪を論じるものだ。だが、現実は、もはやそんなレベルではない。今や市場で行われている取引は、すべてコンピュータによるものだ。善悪を論じても意味がない。コンピュータが勝ったのだ。この流れは加速する一方だ。

昨年、ロンドンに赴任してきたが、ロンドンのコモディティー市場のフロアは非常に狭く、今も人間による取引が行われている世界で数少ない立ち合い所の一つだ。彼らでさえコンピュータを使っている。ニューヨーク証券取引所のフロアを仕切っているのは、今や大手高頻度取引業者KCGホールディングスとシタデルだ。議論すべきは、コンピュータがいかに取引所のシステムとうまくやっていけるかだ。

ーアルゴリズム戦争を一言で説明すると?

パタースン:トレーダーが取引所に某社の買い注文を出すと、アルゴリズム、つまりコンピュータプログラムによって処理されるわけだが、他の業者のコンピュータが、その動きをつかみ、株価を押し上げようとする。一方、買い注文を出したコンピュータは、その動きを悟られまいとする。どちらがどちらの裏をかくか。チェス同様、アルゴリズムには非常にハイレベルのゲーム理論が組み込まれている。

取引所は、大手高頻度取引業者の一部が他の取引を検知できるよう便宜を図っている。そうした業者が、機関投資家の大商いには一定のパターンがあるのかなどを見抜き、いち早く売買注文を出すというようなことも可能だ。

ー高頻度取引のプラス面は何ですか。

パタースン:かつて市場は、高額な手数料を取る仲買人が一手に仕切っていた。不透明で競争原理が働いておらず、投資家にとって、いい市場とはいえなかった。そこにレビンが現れ、買い手と売り手が直接、しかも素早く取引できるコンピュータシステムを構築した。投資家がブローカーに利用されており、市場が非効率で腐敗していることを知っていたからだ。

ー高頻度取引で市場が改善されたと?

パタースン:非常に効率化し、腐敗度が下がった点では、イエスだ。とはいえ、改善の余地がない、という意味ではない。大手高頻度取引業者という「新インサイダー」が現れ、そのパワーを駆使し、水面下で取引所から恩恵を得て株価の流れをコントロールするようになった。数分間で株価が大幅に下落する「フラッシュ・クラッシュ」など、コンピュータの誤作動という大きな不安定要因もある。

コンピュータが悪いなどと言うつもりはないが、規制当局は市場に目を光らせ、システムがどのように機能しているかなどを逐一把握する必要性に迫られている。だが、後手に回っているのが実情だ。

文=肥田美佐子

 

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