谷本:また、日銀は量と質の他に、一部では劇薬などと称されるマイナス金利という政策にも踏み込みました。
大村:マイナス金利があってはいけないとは思いませんが、実施した欧州の一部の国とは条件が違います。そのまま持ち込むのではなく、金融ビジネスの現状や高齢化時代の運用環境なども含めてトータルな影響を考えてから判断しなければいけなかったと思います。今のところ、マイナス面のほうが目立ちます。
官庁というのは、どうしても他国での経験例を持ってきたがるところがあります。私も内閣府に一時在職したことがありますが、アイデアに詰まるとつい世界のどこかで同じようなことをやっているところはないか、と考えがちです。そういうとき、補佐クラスの人たちがあちこちから探してくるのですが、そんな国は日本の参考にならない条件の小国だったりするんです。
さっきのインフレターゲティングのときもそうなんですが、全く参考にならない事例が集められました。このような対応姿勢にも問題があると思います。
大村敬一◎早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授。慶應義塾大学商学部卒業。同大学院経済学研究科博士課程終了。法政大学より経済学博士号取得。法政大学経済学部教授、早稲田大学商学部教授、マサチューセッツ工科大学客員研究員、ミシガン大学客員研究員、ニューヨーク大学客員研究員等を経て、現職。
この間、早稲田大学大学院ファイナンス研究科長、証券アナリスト試験委員/カリキュラム委員長、大蔵省財務総合政策研究所特別研究官、内閣府官房審議官、日本ファイナンス学会会長、日本リアルオプション学会会長等を歴任。著書『株式市場のマイクロストラクチャー』は、日本経済新聞社経済図書文化賞を受賞。