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グーグルCEOのサンダー・ピチャイ(Photo by Ethan Pines)

新会社アルファベットの創業に伴い、グーグルCEOの座を退いた創業者のラリー・ペイジ。彼が後任に据えたのは、“起業家的研究者”とも称されるAI(人工知能)の旗手だった。

シリコンバレーにある2万2,000人収容のショアライン・アンフィシアター。ここは、音楽ファンにとっての憧れの地だ。ニール・ヤングやビージーズ、ブルース・スプリングスティーンらがステージを彩ってきた。5月中旬、弾むような電子音楽と巨大ビデオ映像に包まれながら一人の男性が登壇した。グーグルのサンダー・ピチャイCEO(43)だ。

毎年恒例の「グーグルI/O」カンファレンスでは、ピチャイが最大の出し物だった。客席を埋めるソフトウェア開発者たちから冷やかしや喝采を受けるうちに、彼の顔にもようやく笑みが浮かんだ。

「私たちはとても、とてもエキサイティングな時代に生きています。コンピューティングは素晴らし〜い進化を遂げました」と、インド南部の訛りでピチャイは言った。

さすがに、「スティーブ・ジョブズのように……」とはいかない。ピチャイは典型的な内部昇格のCEOで、控えめで理路整然とした頭脳派なのだ。新製品のデモで聴衆を沸かせるよりも、コンピュータ科学の未来をオタクっぽく語るほうが似合っている。グーグルの共同創業者のラリー・ペイジは昨年、まさにその点を買って経営をピチャイに委ねたのだ。

ピチャイの責務は重大だ。世界第2位に当たる約5,000億ドルの時価総額をもつグーグルは、検索やデジタル広告、モバイル、ビデオなど、IT業界のさまざまな分野を支配している。

だがペイジもピチャイも、IT業界の巨人たちがその絶頂期に道を見失ってきたことは承知の上だ。それにグーグルは、4つの強大なライバルに対して熾烈な多正面作戦を展開している。モバイルではアップル、広告と動画とコミュニケーションではフェイスブック。電子商取引ではアマゾン、業務用ソフトウェアではよみがえったマイクロソフト。さらにその両社とはクラウドサービスでも競っている。

こうした戦いの一方で、土台となる技術そのものが日々変わり続けている。グーグルがデスクトップからモバイルへの移行を続行するなか、コンピューティングはすでにマルチスクリーン化や、アマゾンのスマートスピーカー「Echo(エコー)」のような無スクリーン化へ動きだしているのだ。デバイスやアプリの操作は急速に双方向化が進み、マイクロソフトやフェイスブックなどは「ボット」を導入しつつある。

ピチャイは、新たなIT界がグーグルにはうってつけだと信じている。その理由は、人工知能(AI)だ。グーグルは何年も前からAIに力を入れてきた。大半のライバル企業に先んじて、音声認識や言語理解、機械翻訳といった基礎的な“資材”に投資してきたのである。そうした努力の甲斐あって、同社は競争に打ち勝つための魅力的なプロダクトを世に出す準備ができている。

「私たちはモバイルの世界からAIの世界への移行を、何年もかけて構想してきました」と、ピチャイはフォーブス誌に語った。

サンダー・ピチャイ◎グーグルCEO。インド工科大学カラグプール校卒業後、スタンフォード大学大学院にて物質科学と工学の修士号を取得。アプライド・マテリアルズに勤めた後、ペンシルバニア大学ウォートン校でMBAを取得。マッキンゼーのコンサルタントを経て04年にグーグル入社。ブラウザ「クローム」の開発に関わるなど、同社の中核的な存在に。15年より現職。

文=ミゲル・ヘルフト、翻訳=町田敦夫

 

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