ハンケは、自身のこれまでの経験から地図とゲームを組み合わせることを思い立ち、スマホゲーム史上最も成功したゲームを生み出した。グーグルは、子会社だったナイアンティックのスピンアウトを承認し、そのお陰でナイアンティックは独自のビジョンを追求することができた。任天堂はハンケのビジョンに共鳴し、ナイアンティックにキャラクター使用権を供与した。
これまでのシリコンバレーでは、スタートアップが成功するとそれを支援したベンチャーキャピタル(VC)も称賛されるのが常だった。しかし、ポケモンGOに関してはVCの名前は一切出てこない。それは、フォーブスが以前報じた通り、大手VCの多くが出資を見送って、ナイアンティックはグーグル、任天堂、ポケモン社から資金を調達したからだ。
関係者によると、大手VCのうち少なくとも5社がハンケとの面談に応じたが、出資を断ったという。VCは大魚を逃した形になるが、その背景には当時のナイアンティック社の不安定な立ち位置や、VCがスマホゲームの将来性を読み切れていなかったことが大きい。これら5社のうち、アンドリーセン・ホロウィッツ、セコイア・キャピタル、クライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤーズにコメントを求めたが、回答を得ることはできなかった。
ナイアンティックがVCにピッチ(出資提案)を行っていた2015年の夏、同社は岐路に立っていた。リリースした位置情報ゲーム「イングレス」はニッチゲームの域を出ず、組織再編中のグーグルにおいて他部門に吸収されそうになっていた。ハンケは自主経営の継続を希望し、当時グーグルのCEOだったラリー・ペイジとグーグル・キャピタルでパートナーを務めるデイヴィッド・ラウィーにナイアンティックをスピンオフさせる案を持ち掛けた。