ある地域やプロジェクトが注目されると、世界中から投資家が殺到し、その地域の不動産価格が高騰するという事が世界中で起きています。もともと現地の人の賃金水準だった不動産価格も、あっという間に手の届かない価格になってしまいます。これは現地で生活する人からしてみるとたまったものではありません。長年自分たちが生活していた地域に突然外国人投資家がやってきて不動産を買い上げてしまい、自分たちが住めなくなってしまったと感じてしまいます。
そのように現地の人の不満が高まると、外国人の購入価格制限や印紙税の増税などの政府の規制が行われることになってしまいます。これは投資家にとっても現地の人にとっても喜ばしいこととは言えません。
極端なケースでは、そういった政府の措置にもかかわらず過熱が高じてバブル化してしまいます。バブル時に集まってくる投資家は「投機」を目的にしている場合が多く、不動産を購入しても利用せず、寝かせたままにしていることもあります。あまりにもその数が多いと、夜になっても電気もつかないゴーストタウンのような地域になってしまいます。
さらにそのような投機家は一時的に市場が悪くなるととたんに狼狽売りに走ります。市場に供給される物件が一度増えるため、価格が下落し、必要以上に市場が不安定化してしまいます。そうなると「この地域はもうダメだ」といって、また別の地域や国に移っていくことになります。焼き畑的な不動産投資で、これでは海外投資家は現地の人たちからは歓迎されません。「勝手に海外からやってきた投資家が市場を荒らして去って行った」となるわけです。
マレーシアのイスカンダル計画も近年注目が集まり、プチバブル的な事が発生しました。現在はそのプチバブルも落ち着き、調子局面に入っているといえます。3年ほどで倍近く寝上がった不動産価格も当時の価格くらいまで下落したことから、この地域はもうダメだと思っている投資家もいるようです。
しかし、一方で現地の人からすると、不動産価格の調整を歓迎する意見も多くあります。計画の進捗に遅れはあれど、プロジェクト自体のポテンシャルは変わっておらず、自分たちの手の届くくらいまで不動産価格が戻ってきているからです。
本来投資家とは、一般の人が取れないリスクを引き受けて、その見返りとして利益を得るものです。先見の明をもって現地の人がまだ気付いていないチャンスに気付き、取れないリスクを引き受けることが海外投資家に求められている役割といえます。