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2016.07.14

道を挟んで天国と地獄? 鍵を握る自治体の選択[日本の不動産最前線 第3回]

不動産の価値はなにより、1にも2にも「ロケーション」だ。10億かけて建てた豪邸も、誰も住まないようなところに立地していればそれは実質的に「価値ゼロ」だし、かなり劣化した建物でも立地さえ良ければ、再生に資金投入するか再建築によって新たな価値を創出することも可能だ。

昨今、駅から求められる距離は「徒歩7分以内」。持ち家、賃貸ともにこれを超えると急速にニーズが減少する。5年前は10分でも許容されていたが、いまやマンションデベロッパーも8分超えとなる用地に手を出すことには非常に慎重だ。

国土交通省が2014年に公表した「国土のグランドデザイン2050」は、現在は人が住んでいる地域の60%以上で人口が半減もしくはそれ以下となり、20%は無居住化。多くの地域が消滅の危機にあると指摘する。【関連】ゴーストタウン化!? 日本都市の空き家が社会問題に
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資料:国土のグランドデザイン2050 参考資料(国交省)より

同年には日本創成会議が、全国のおよそ50%にあたる896もの基礎自治体を「消滅可能性都市」と指定し話題を集めたが、現実には自治体が消えてなくなってしまうわけではなく、各自治体の中で「活かす街」と「捨てる街」を決定し、実行に移すことになりそうだ。

あまり知られていないが、2014年8月に街の在り方を根本的に変える大改革が行われた。「都市再生特別措置法の改正」がそれだ。この「改正特措法」の施行で、各基礎自治体が「活かす街」を具体的に指定可能になった。

例えば、医療・福祉施設や子育て施設、商業施設などを集約する「都市機能誘導区域」。これから加速度的に人口減少が始まる中において、人口密度を維持ないしは増加させ、生活サービスやコミュニティが持続的に確保できるよう居住を誘導する「居住誘導区域」。こうした地域には容積率の緩和や税制優遇、補助金制度などで同区域内への移転を促進する。
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文=長嶋 修

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