リフトは将来を見据えたときに、単独でロボット車両を開発する体力はなく、資金力が最もある企業が勝ち残ると諦めたのかもしれない。新しい時代の勝ち組はウーバー、中国のディディチューシン(滴滴出行)、アップル、グーグルらと大手自動車メーカーの組み合わせになる可能性が高い。リフトの象徴だったダッシュボードで光るピンクのヒゲの飾り物や、ドライバーとのハイタッチで勝負する時代は終わったのだ。
身売り企業続出の可能性
イスラエルの配車アプリ「Gett」も、リフト同様に大型の資金調達を実現しながら存在感を示せていない。リフトはテキサス州オースチンでは強かったが、同市でドライバーの指紋検査を必須とする法案が成立したため、ウーバーと共に営業を停止した。アメリカ国外では、インドのOlaや東南アジアのGrabなど地元サービスがウーバーと激しい競争を繰り広げている。
今後、リフトのように身売りを検討する配車アプリが世界中で続出するかもしれない。しかし、評価額は企業によってまちまちだろう。リフトの直近の評価額は、GMが保有比率10%で5億ドルを出資していることから50億ドル(約5,140億円)と推測されるが、この金額では誰も買収に応じないだろう。
大幅な減額になった場合、既存株主の利益は守られるが、大規模なリストラの可能性もある。OlaやGrab、Gettも巨額の資金調達を行っているが、身売りをするとしたらリフト同様に大幅な評価減は免れないだろう。
リフトがディディチューシンの傘下に入るシナリオも十分考えられる(滴滴はリフトに出資している)。そうなれば、全世界で滴滴とウーバーの一騎打ちとなり、当面は両社で市場を独占することになるだろう。いずれにせよ、配車アプリ業界における群雄割拠が終焉を迎える日は近いのかもしれない。