イノベーションの手段として、今、世界的に「オープンデータ」の活用が進んでいる。2009年に米オバマ大統領がオープンデータ活用の推進を宣言した「Gov.2.0宣言」以降、先進国で取り組みが増加。12年のロンドン五輪開催時には、交通機関の混雑予測などの情報が数多く公開された。現在では自治体を中心とした成功例が生まれている。
そうした時代背景を受け、大和ハウス工業グループが次のイノベーションの一手に選んだのが「物流×オープンデータ」だ。世界的にも珍しい、民間企業による、物流に関するオープンデータ活用コンテストを今年、開催する。応募期間は7月18日までで、9月に表彰式を行う。仕掛け人は、大和ハウス工業グループのフレームワークス社長・秋葉淳一、そして「IoT(モノのインターネット)」研究の第一人者、東京大学大学院情報学環教授・坂村健だ。
「IoTは、『モノのインターネット』と訳されることから誤解されがちだが、単に『モノがインターネットに繋がる』ということではない。IoTは、企業や所有者などの枠組みを超えて、『モノがインターネットのように繋がる』社会を支えるインフラのことだ」(坂村)
IoT時代の到来により、日本の物流にも転換期が訪れているという。そのきっかけとなっているのは、米アマゾンに代表されるインターネット通販市場の急拡大だ。ネット、リアルとありとあらゆる販売チャネルがシームレスに統合され、流通する商品も多品種・少量・多頻度化している。
「IoT時代の新たな物流は、効率化という観点だけでなく、流通の顧客満足度を左右する付加価値創造に主眼を置いて構築する“新しい一手”が必要だ。そんな変革期の中で、物流の新しい価値をオープンデータの視点から見出そうと始めたのが今回のプロジェクトだ」(秋葉)
坂村は14年、東京メトロと「オープンデータ活用コンテスト」を行った。駅構内で乳母車を押す人を素早くエレベーターへ誘導するスマートフォンアプリなど、世界各国から集まったアイデアは2,800案、ソフトウェアは約300。開発の規模で表せば数億円になる。
フレームワークスは今回、(1)倉庫に関するデータ、(2)物流に関するデータ、(3)地域に関するデータを提供。そして、物流業務や倉庫管理業務に役立つものに加え、一般消費者に役立つ倉庫・物流データを利用したアプリケーションを広く募集する。
「世界初だからこそ、IoT時代に重要性の増す物流にどんなアイデアが新たなインパクトをもたらすか期待したい」(坂村)