この動きはフェイスブックやアマゾンがAI(人工知能)やチャットで採用した流れを追うものだ。この試みが成功すれば、アップルはさらにiPhoneの売上を伸ばし、スマホ市場のリーダーであり続けることになるだろう。かつてアップルが革新的な新製品を発表する場だったWWDCは近年、ソフトウェアのアップデートを発表する場になりつつある。今回、ティム・クックCEOとソフトウェア部門長のクレイグ・フェデリギは、iPhoneのネイティブアプリに関する一連の変更や、地図や写真、さらにアップルミュージックの新機能を発表した。
「アップルは一歩ずつ、これまで築き上げた壁を崩していこうとしています」と、IBBコンサルティングのジェファーソン・ワンは分析する。「アップルは今まで以上に業界や消費者の意見を聞こうとしています」
スティーブ・ジョブズが最初のiPhoneを世に送り出し、iPhone 4の時代まで、アップルはiOSのコントロールを完全に自社の支配下に置いていた。「しかし、今やアップルも外部の意見を聞かざるを得なくなったのです」とワンは言う。ここ数年でスマホ市場は成熟期に入り、アップルやサムスンといった主要メーカーは、自社だけでイノベーションを起こすのではなく外部との連携を求められる時代になった。
今回のオープン化で最も重要と見なされるのが、メッセージの開放だ。7月にベータ版が公開される新メッセージでアップルは、写真やライブ動画の送信を可能にし、リンクやこれまでより3倍大きな絵文字も導入する。キーボードで絵文字の検索も可能になり、絵文字の予測変換も導入される。
ガートナーのアナリスト、ブライアン・ブラウは「iPhoneやアップルウォッチのコミュニケーションにおいて、メッセージはますます重要になりつつあります。また、広告主たちもメッセージを通じたユーザーとのコミュニケーションを望んでいます。だからこそアップルはメッセージを、よりリッチなものにしようとしているのです」と語る。
しかし、アップルは今回、フェイスブックのようにチャットボットの開発を外部に開放するまでには至っておらず、これはかなり先のことになりそうだ。「将来的にはコミュニケーション機能にさらに様々な機能が加わると思えます。アップルはまだ第一歩を歩み始めた段階であり、時間をかけてそれを実現させていくことでしょう」とブラウは述べた。