アマゾンは、ただ特定の商品に対する需要を感知してそれに反応しているだけではないのだ。収集した個人データは、顧客が「持つべき」と「持っていたら便利」の違いを知る上でも使われる。サプライチェーン戦略家の観点から見ると、つまりは“需要を感知する能力を改善せよ。だがそれが本当に意味するものは何かについて理解を深めることも忘れてはならない”ということだ。
技術ではなく顧客とつながる
アマゾンは、AIの専門家が「コンテキスト・アウェアネス」と呼ぶ能力を使ったサービスの提供を行う態勢を整えている。これは消費者が「何を」必要としているかだけではなく、「いつ」「なぜ」「どこで」「どうやって」それを必要としているのかまでを知ることを意味する。消費者が望むものだけでなく、必要なものを、おそらく消費者自身が必要だと気づく前に売るために取り組みを行っているのだ。
アマゾンが顧客の全てを知ろうとすることに、私はしばしば疑念を抱いてきた。だが、アマゾンは特定の技術ではなく、顧客とつながっている企業だと自負しているというベゾスの言葉が、少しずつ信じられるようになってきた。
ものごとを感知しそれに反応する技術と、それを理解する力との組み合わせは、消費者だけでなく社会にも画期的な変化をもたらす可能性がある。