テクノロジー

2016.06.09 10:00

ミシェル夫人も利用、マッチングアプリ「nine」を生んだ関口 舞

関口舞 / 写真=岡田晃奈

自分の欲望に、驚くほど忠実な人だ。高校時代、「思い描いていた未来に現実が追いついていない」という思いから、NASAでインターンを経験した。気になっていた男性が、実は自分に好意を抱いていたと後から人伝えに知り、悔しさのあまり“両思いアプリ”をリリースしたこともある。

どうにかしたい、と思ったらすぐ行動に移す。そのスピードが、とても速い。「『いつかできればいい』ではなく、いますぐにやりたい。私、いつも急いでいる気がします」。Lipの共同創業者、関口舞(25)はそう笑う。

Lipが提供する「nine(ナイン)」とは、インスタグラム上で「いいね!」が多くついた9枚の画像を使い、一枚のコラージュ画像を作成するサービス。それはネイルであったり、ファッションであったり、趣味であったり。9枚の画像が揃うと、不思議とどんな人物かが見えてくる。肩書やプロフィル写真だけでは伝わらない、その人ならではの「内面」にフォーカスしたうえで、マッチングを行う。ミッシェル・オバマやドナルド・トランプらもサービスを利用したことから、米国でも注目を集める。

「nine」構想の原点には、先の“両思いアプリ”がある。このアプリをリリースしたところ、次から次へと感謝の手紙が関口の元に届いた。あるLGBTの男性は、親友の男性に思いを寄せるものの言い出せずにいたが、アプリを通し、相手と心が通じていることがわかったという。そんな声に、関口の心が動いた。

「私でも、他人の人生を変えるサービスをつくることができるんだ」。人生において最も大切なのは「出会い」ではないか。そんな風に考えるようにもなっていた。

奇しくもその頃、米国で人工知能の研究をしていた、後に共同創業者となる松村有祐と出会う。個性が光る、クリエイティブなマッチングアプリをつくりたい、と気持ちが固まる。“個性の集約”とも言えるインスタグラムに目をつけた。

「現実世界だけでは、住んでいる場所や環境で可能性が限られてしまう。出会いの可能性を広げられるような風潮を、私たちがつくりたい」

つくるからには、何億人もの人が利用するサービスにしたい。画像は非言語的なものだから、国境は簡単に超えられる。

「ザッカーバーグは、いまの私の歳よりも若くして、フェイスブックを設立していますからね」。比較対象は、若くして功績を残したヒーローたち。大きな野望を胸に、軽やかにいまを駆け抜ける。

せきぐち・まい◎1990年生まれ。大学卒業後、広告代理店に就職するが約半年で退社。2014年3月に好きな相手と両思いか確認できるアプリ「one heart」をリリースし、注目を集める。フェイスブックのAPI変更により、同サービスを終了した後、14年11月にLipを共同創業。

文=古谷ゆう子

この記事は 「Forbes JAPAN No.23 2016年6月号(2016/04/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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