アートが香る過去と現在
グランド・セントラル駅からわずか数ブロック。ニューヨークのミッドタウンにあるザ・レンウィック・ホテルに足を踏み入れると、すぐにアートな要素が目に入ってくる。左側には地元アーティストの手による3Dのストリングアート。前方には、ニューヨーク出身のアーティスト、グレゴリー・シフが制作中のグラフィティアート。作品に組み込まれた品々の中には、1953年の改修時、メールシュートに詰まっているのが見つかった手紙もある。
173ある客室それぞれにも、アートの要素がある。ワークベンチを連想させるデスクや、絵の具が飛び散ったコンクリートを真似た柄のカーペットなど、アーティストのスタジオにあるものを思わせる品々だ。どの都市にあっても同じに見えるホテルとは異なり、ここにはアートに“囲まれている”刺激がある。
スイートルームは33部屋。いずれも、この建物がホテル・ベッドフォードだった頃に滞在していた著名な文学人やアーティストにインスピレーションを得た造りになっている。ジョン・スタインベックの『ロシア紀行』からアレックス・カーショウによるロバート・キャパの伝記『血とシャンパン:ロバート・キャパその生涯と時代』まで、さまざまな文芸作品が参考になっている。
文豪たちが愛したカクテル
館内には、有名シェフのジョン・デルシーが切り盛りするレストランBedford & Coがある。デルシー独立後の初店舗となるこの店では、主にコンテンポラリー・アメリカンスタイルの季節に応じたメニューを提供。ドリンクメニューは季節ごとに変わり、禁酒時代スタイルのカクテルからビール、上等のワインまで幅広いセレクションを用意している。大理石のバーでは、スタインベックやキャパたちもここに座ったのだと思いをめぐらせるのも楽しい。