川上量生x竹内 薫、私たちが「新しい学校」をつくる理由

[左]N高等学校を開校するカドカワ社長、川上量生[右]MIRAI小学校を設立予定のサイエンス作家、竹内薫 (photograph by Koichiro Matsui)

ネットの高校「N高等学校」を開校するカドカワ社長、川上量生と「MIRAI小学校」を設立予定のサイエンス作家、竹内薫。お二人に聞きました。これからの人材に必要な学びとは?


新しい時代には、新しい学びの場があっていい—。今年4月にカドカワ(昨年、KADOKAWA・DWANGOから社名変更)がスタートさせるデジタルネイティブ世代のための新しい通信制高校「N高等学校」。そのプログラムを見ると、心躍らずにはいられない。

プログラミングや文芸小説など、プロによる授業に加え、地方自治体と組んでの酪農・漁業体験も。なぜ、こんなにも「面白そう」なのか。まずは、お二人が新しい学校をつくろうと考えたきっかけから。

川上量生(以下、川上):「N高等学校」のプロモーションをするうえでの最大の特徴は何か、というと、通信制高校なのに正規の授業の説明をまったくしていないんですよ。僕らは、課外授業にもの凄いエネルギーを注いでいて。

大学受験コースにおいても課外授業で学んでください、という。

竹内 薫(以下、竹内):ご自身が学生の時も、やはり自分で好き勝手勉強していたのですか?

川上:僕は基本的に授業を聞いていなかったですね。ずっと本を読んでいました。でも、まともに本を読んでいたら怒られるので、教科書を読んでいたんです。とはいえ、それも1学期で読み終わってしまう。そこからは暇でしたね。

竹内:僕は教科書を読み終わると、友達と机の下で将棋をやっていました。見つかって、凄く怒られて。

川上:凄く怒られますよね。

竹内:効率が悪いんですよね。

川上:本当に効率が悪いと思います。読む教科書がなくなって、ほかの授業の教科書を読むとそれはそれで怒られる。そういった現状に一石を投じたいという思いはあります。

これまでの一斉授業から、コンピュータとネットで一人一人の学力に合わせる勉強方法に授業も変わっていくのは必然だと思うんです。何をやるべきかと考えた結論が、課外授業に注力しよう、ということでした。

もともと僕らは、教育事業に参入する気はまったくなかったんです。ただ、ドワンゴが通信制高校を手掛けるべきだ、と言ってくれている方がいて。話を聞いていると、いま、不登校の人たちは家に引き蘢って、みなネットを見ている。そして100%の確率でニコニコ動画を見ている、と。角川の本も読んでいる。そう考えると、必ずしも僕らと無関係ではないな、と思ったんです。

ニコニコ動画などを持っている僕らが総力を挙げれば、理想の高校がつくれる。理想の高校は同時に、“未来の高校”だと思う。双方向の授業を行う、未来に最も近い最先端の通信制高校を僕らならつくれるだろう、と考えたんです。


[N高等学校とは?]
今年4月に開校する、インターネットを利用した通信制高校。生徒一人ひとりの習熟度に合わせ た双方向の授業を行い、全日制高校と同じ卒業資格を得ることができる。本校は沖縄県うるま市に置き、年5日間のスクーリング(教師による面接指導)を行 う。ライトノベルやイラスト、ファッション、ゲームといった幅広い分野のプロフェッショナルを教師に迎える課外授業も。『学年ビリのギャルが1年で偏差値 を40上げて慶應大学に現役合格した話』の著者として知られる坪田信貴が塾長を務める東大志望者限定の個別指導塾「N塾」も開校予定。


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フォーブス ジャパン編集部 = 構成 松井康一郎 = 写真

この記事は 「Forbes JAPAN No.21 2016年4月号(2016/02/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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