「昔ながらの仕事」は最新テクノロジーでこう変わる

3D仮想空間「セカンドライフ」 の生みの親としても知られるフィ リップ・ローズデールCEO。

3Dプリンティングやデジタル地図など古い−。そう考えるのは時期尚早だ。日々進化するテクノロジーにより、私たちの生活は急速に形を変えている。ここでは、少し前に“流行った”とされる技術の現在地をご紹介しよう。

仕事も勉強も、仮想世界で!VRの未来は“ソーシャル”へ

「VR元年」ともいわれる今年、バーチャル・リアリティー関連の話題がお茶の間をにぎわせている。今のところはVRで臨場感あふれるゲームを楽しんだり、見知らぬ土地を旅行したりするような使い道が一般的だが、可能性はそれにとどまらない。インターネットがホームページからブログ、SNSへと発展していったように、VRも遅かれ早かれ、“ソーシャル”な世界へと展開すると予想されている。「みんなが、仮想世界で一つの場所に集まって交流したり、学習したりできるようになります。VRは我々にとって新しい生活と仕事の場になるのです」と、VRスタートアップ「High Fidelity(ハイ・フィデリティ)」を率いるフィリップ・ローズデールCEOは語る。

この「ソーシャルVR」の分野には、同社のほか、グーグルが出資するAltSpace(アルトスペース)などが参入し、競争が激化。フェイスブックも「ソーシャルVR」チームを社内に発足させたと報じられている。

ソーシャルVRでとりわけ注目されているのが、教育現場での活用だ。「たとえば体内の細胞の仕組みなど、言葉や図ではわかりづらくても、3D画像なら視覚的に理解しやすい。それに、教師はヘッドセットを通して生徒一人ひとりと直接コミュニケーションをとれるから、少人数での教育にとても有効です」(ローズデール)

『ターミネーター』式3Dプリンティング?


いまから数年前、「3Dプリンティング」が世界的に大きな話題となった。だが、趣味の域を出ない試作品しか作れないこともあり、ブームで終わった感もある。しかし、米製造企業「カーボン3D」がそれを変えるかしれない。同社はかつてないスピードと正確さを誇る3Dプリンティング技術を開発した。従来のように、ロボットアームを使ってプラスチックの層を塗り重ねていくのではなく、リキッド・プラスチックの容器内で固化した製品を引き出す手法でつくるのである。

容器の底は酸素透過性の高いガラスでできており、そこから抜け出る“空気のクッション”によりプラスチック樹脂が底にくっつかない。そこで、ガラス面の下からレーザー光線で3Dファイルに沿ってプラスチック樹脂を切り抜き、固めていく。その後、完成したプラスチック製品を容器から引き出すのである。まさに、映画『ターミネーター2』で敵役がリキッドメタルの水溜まりから姿を現すかのようなイメージだ。

カーボン3Dによると、この方法で従来の3Dプリンターと比較して25〜100倍の速さでより高精度の製品をつくれる。すでに、セコイア・キャピタルやグーグル・ベンチャーズなどの大手ベンチャー投資会社が出資していることもあり、ますます同社への注目は高まりそうだ。

CARBON
カーボン3Dのジョゼフ・デシモーネCEOは、映画『ターミネーター2』にヒントを得たという。
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ホリー・スレイド / アーロン・ティリー / 増谷 康 / ミゲル・ヘルフト = 文 トーマス・ストランド / クリスチャン・ピーコック / ラミン・ラヒミアン / ロバート・ギャラガー = 写真

この記事は 「Forbes JAPAN No.23 2016年6月号(2016/04/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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