工場も全自動化する未来の“製造会社”
米製造会社「プロト・ラボ」の工場では24時間、ゼロックスやフォードといった顧客のために、プラスチックや金属の部品を作っている。だが、プロト・ラボのヴィッキー・ホルトCEO(56)は「うちは製造会社ではない」と主張する。理由は、その“製造方法”にある。同社の工場は、コンピュータ数値制御された機器や3Dプリンターを利用している上、製造プロセスがすべて自動化されている。だから、「製造企業というよりもテクノロジー企業」というのだ。
そもそも、プロト・ラボは従来の製造業への不満から生まれた会社である。創業者は、部品の納期遅れやコストの高さに業を煮やして同社を立ち上げた。すばやく試作品をつくるビジネスが顧客の間でウケて、年平均25%の成長を遂げてきた。今ではアメリカをはじめ、欧州や日本にも工場を持っている。
世界各国に拠点を広げたことで、同社は製造に関する新たな知見を得たという。例えば、「部品を安く、早く提供すること」は、日本やドイツでは“低品質”と解釈される可能性がある点など。アメリカの顧客からも、より高度な3Dプリンティングを望む声が増えたそうだ。製造業をデジタル化させる。プロト・ラボは、ホルトが望む“テクノロジー企業”への進化を目指している。
「3D CAD設計が急速に進歩している」と語るホルトCEO。同社も海外への進出を早めている。
デジタル地図の進化が社会生活を激変させる
今年の1月末、米ロサンゼルス市が最新テクノロジーを使ったサービスを発表した。なんと、“地図”である。オープン・プラットフォーム「GeoHub(ジオ・ハブ)」では、誰もがデジタル地図上で情報を共有できる。例えば、火災の際に消防士が消火栓の位置を調べることも可能だ。当局は、ジオ・ハブを使った「市民生活の向上」に期待している。
開発したのは、ジャック・デンジャーモンド(70)。“デジタル地図の父”の異名を持つ、地図情報サービス企業「ESRI(エスリ)」の創業者だ。同社は、「地理情報システム(GIS)」市場の半分を押さえる業界大手で、顧客には米国政府や米連邦緊急事態管理庁(FEMA)などがいる。
そのエスリが急速に市場をさらに広げつつある。近年、企業や研究機関がデジタル地図の可能性に気づき、取り入れ始めたからだ。例えば、米薬局チェーン「ウォルグリーン」ではエスリのツールを使って店舗地図を提供し、スタンフォード大学も研究で同社の地図を活用している。
デンジャーモンドは、「地理学の啓蒙時代に入った」と宣言する。「この両機は、次の5〜10年、桁違いの成長を遂げるに違いありません」
エスリのデンジャーモンドCEO。ビル・ゲイツも「この領域の進歩は彼のおかげ」と語る。