だがウォール街の一部アナリストたちは、映画の公開というものが本質的に一定したものではないことと、それがディズニーの決算に及ぼす影響に懸念を表明してきた。
5月10日、ディズニーは四半期決算を発表。映画部門の業績は好調だったものの、5年ぶりに売上高が市場予想を下回った。これを受けて投資家たちはすぐに株を売却。ディズニーの株価は11日、4%下落して101.87ドル(約1万1,090円)となった。
投資銀行ゴールドマン・サックスのアナリスト、ドリュー・ボルストは顧客向けの報告の中で、低調な決算は「ヒット志向の映画事業によって(同社への)期待が高まっていることと、ケーブルネットワーク事業が直面する長期的な逆風に対する、市場の懸念を浮き彫りにしている」と指摘した。
『スター・ウォーズ』のような映画はディズニーに記録的な利益をもたらしたが、それでもスポーツ専門チャンネルESPNに対する投資家たちの不安は消えないESPNのようなケーブルネットワークやABCのような放送網は、ディズニーの収益の大きな部分を占めるからだ。
だがますます多くの人がケーブルテレビの契約を解除しており、ディズニーはますます、成長を映画に依存している。直近の四半期では、スタジオ部門が最も好調で、22%の増収となった。
「安定した事業とされているケーブルネットワーク事業よりも、本質的にむらのある事業が成長の重要な推進力となっている(そして今後もそうあり続ける可能性が高い)」と、証券大手バークレイズのアナリスト、カナン・ベンカテシュワルは見解を示した。
またモルガン・スタンレーのベンジャミン・スウィンバーンは、投資家たちは「映画部門で異例の数年規模のロングラン」がもたらしている堅調な増益に「甘やかされている」状態だと分析している。
ディズニーに恩恵をもたらしているのは、映画の興行成績だけではない。同社は映画の大成功を“フル活用”するために、ファン向けの関連グッズやゲームも展開している。それでも第2四半期のコンシューマー製品部門の売上高は2%減だった。『アナと雪の女王』の関連グッズが、1年前ほどの勢いでは売れなくなっていることがその一因だ。
映画部門の成功の“産物”は、投資家の大きな期待だ。年内に公開が予定されている『ファインディング・ドリー(Finding Dory)』や『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅(Alice through the Looking Glass)』のような映画に対しても、既に期待が高まっている。ウォール街は、『スター・ウォーズ』のホームビデオの売上についても好調と予想している。
彼らが、それらの成功を当然と受け止める可能性もある。「映画の成功と増収への期待は、おおむね織り込み済みだ」とスウィンバーンは言う。ディズニーの株価収益率は16倍と、21世紀フォックス(14倍)、CBS(13倍)やタイムワーナー(12倍)に比べて割高だ。
強気な見方をする人々は、ウォール街の“心配性の人々”は細部にとらわれて全体を見ていないのだと主張するかもしれない。いずれにせよ、数十億ドル規模のヒットが、断続的であれ続くのは、エンターテインメント界において悪いことではないはずだ。