現状iPhoneを使ってVR体験ができるのは、グーグルの「カードボード(Cardboard)」(段ボール製の簡易ヘッドセット)くらいだ。アップルはVRに関して表立った動きを見せてこなかったが、iPhone 7のリリースを控える中、いよいよ本腰を入れてVR業界に参入するのではとの憶測が広がっている。
これまでアップルは公式の場でVR市場に関心を示してこなかった。しかし、2016年1月に行われた四半期決算のカンファレンスコールで、CEOのティム・クックが「VRはもはやニッチではない。とてもクールで面白い用途がたくさんある」と述べると、アップルファンたちは色めき立った。
VR系人材、獲得に乗り出したアップル
アップルがVR製品を開発していることを示す証拠はいくつかある。まず、アップルはVRエンジニアを積極的に採用している。同社は2014年11月に3Dグラフィックス、VR、AR(拡張現実)のエンジニアを募集し、募集要項に「プロトタイピングとユーザーテストを目的に、VRシステムと連携する高性能のアプリを開発するエンジニアを募集」と記載している。
その後、同社はマイクロソフトで拡張現実ヘッドセット「ホロレンズ(HoloLens)」の開発に3年間携わったニック・トムプソンや、同じくマイクロソフト出身で機械学習を利用した行動認識技術の開発を担当したベネット・ウィルバーン、ライトロ(Lytro)でVR用のレンズやセンサーの開発を担当したグラハム・ミューレなど、VR業界のスーパースターたちを獲得している。
また、アップルはVR関連企業を立て続けに買収している。2013年にXboxのKinectセンサーを開発したプライムセンス(PrimeSense)を3億4,500万ドルで買収した後、2015年にはドイツのAR企業でイケアやフェラーリ向けにARアプリを開発したことで知られるメタイオ(Metaio)を傘下に収めた。
そして、最近ではARスタートアップのフライバイ・メディア(Flyby Media)を買収している。これでアップルはAR/VRに関するテクノロジー、人材、開発チームを全て手に入れたことになる。