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セバスチャン・スラン (Photo by Brendan Hoffman/Getty Images for Smithsonian Magazine)

オンライン教育のスタートアップ「Udacity(ユダシティ)」は昨年のインド進出に続き、中国で事業展開することを明らかにした。

カリフォルニア州マウンテンビューに本拠を置くユダシティは、グーグルX創設者でスタンフォード大学の特任教授を務めるセバスチャン・スランによって4年前に設立された。4月20日、同社は中国事務所を開設し、「youdaxue.com」というドメインを取得して100以上のオンラインコースを無料で提供することを発表した。

また、ユダシティは新プログラム「UConnect(ユーコネクト)」を立ち上げたことも発表した。同社はこれまで、「Nanodegree(ナノ学位)」というiOSやAndroidの開発や機械学習など先端技術を短期間で習得できるプログラムを提供してきた。ナノ学位は、取得するためにいくつかのプロジェクトを完了する必要があるなど、実践的な内容が特徴だ。新たに立ち上げたユーコネクトは、同社としては初めてインストラクターが対面で指導するプログラムだ。

中国進出に当たり、ユダシティはナノ学位の中でも特に人気の高いコースを中国語で提供し、月額150ドルほどで提供する予定だ。今のところ授業のビデオには中国語の字幕がついている。生徒に対する個別指導は、ユダシティの社員が中国語で行う。

中国でのテック人材需要の急増を見据え

スランは、中国でテック人材の需要が急速に高まっていることを受けて中国進出を決断したという。同社によると、中国ではヘルスケアから金融や物流、製造業まで、あらゆる業種でテック人材が必要とされており、2020年までに700万人から1,200万人の需要が予想されているという。ユダシティは、今後数か月でコース数を増やし、中国語で授業を提供したいとしている。

「我々のミッションは、教育の民主化だ。世界の人口の約半分は高等教育を受けることができていない」とスランは話す。ユダシティの講義はインターネットで配信されるが、生徒たちは課せられたプロジェクトをこなすことで実践的なスキルを習得することができる。その結果、例えば救急医療隊員からプログラマーへといった全くの異業種にキャリアチェンジしたり、社内で早期に昇進することが可能になるという。

ユダシティが目指すのは、生徒が従来のオフライン型の教育プログラムよりも圧倒的に安いコストでスキルアップを図り、収入を大幅に増やすことができるようにすることだ。「我々は教育と仕事をもっと密接にリンクさせるべきだと考え、数年前からそのスタンスを明確にしてきた」とスランは話す。

通常のナノ学位と同様、中国向けプログラムも受講生が12か月以内に修了した場合には授業料の半分が返金される。ナノ学位の取得には平均6-9か月を要するという。受講生には講師が相談に応じてくれるほか、レジュメの指導や面接の練習をしてくれたり、受講生のフォーラムに参加できるといった特典が付与される。アメリカでのナノ学位プログラムの月額授業料は199ドルで、受講生の就職を保証する「Nanodegree Plus(ナノ学位プラス)」は299ドルとなっている。ナノ学位プラスは今年1月にリリースされ、プログラム修了後半年経っても仕事が見つからなければ、全額が返金される。

スランによると、ユダシティの従業員の約四分の一が就職指導に従事しているという。18か月前にナノ学位がスタートして以来、これまでに11,000人がプログラムを受講し、2,500人が学位を取得している。また、無料の個別コースには400万人以上が登録している。

ユダシティは現行の大学教育をモデルにするのはではなく、グーグルやフェイスブック、アマゾン、Github、Clouderaなどと連携して、企業が求める人材の育成に主眼を置いている。大半のコースは少なくとも1社とタイアップしており、企業が教材の材料や専門家を提供したり、インターン生を受け入れたり、ユダシティに資金やリソースを提供するなどして支援している。例えばグーグルは、Android開発のナノ学位を立ち上げるために400万ドルを提供した。

卒業生はJD.comやアマゾン、グーグルに就職

ユダシティは中国でも現地企業と同様の提携を行い、生徒たちの就職を支援していきたいとしている。提携先としては、JD.com(京東商城)、Youku-Tudou(優酷土豆)、Sina.com(新浪)、アマゾン、グーグルのAndroid、Didi Chuxing(滴滴出行)などが含まれる。ユダシティは、企業からの意見を取り入れて生徒に課すプロジェクトを設計しており、企業側も生徒の採用に当たってプロジェクトの成績を重視しているという。ユダシティの最高マーケティング責任者であるシャーナズ・デイバーによると、インドの大手eコマース企業であるFlipkartは、ナノ学位の取得者には面接すら行わず、プロジェクトの出来栄えのみで採用を決めることが少なくないという。

ユダシティは中国進出と合わせて、「ユーコネクト」という新サービスを立ち上げたことを発表した。ユーコネクトの受講生はグループに分けられ、インストラクターが対面で指導を行ったり、週次で同じグループの生徒たちと一緒に学ぶことができるというもので、月額100ドルで受講することができる。試験的に行ったプログラムでは、課題の提出率が30%向上し、プログラムを修了する生徒の数も3倍に増えたという。インストラクターもナノ学位の取得者で、担当する学生たちから評価を受ける。インストラクターは最高で月に1万1,000ドルほどの報酬を受け取ることができる。ユーコネクトは5月9日にサンフランシスコ、ロサンゼルス、ニューヨークでスタートし、6月30日までに申し込むと1か月分の利用料が免除されるという。

調査会社Pitch Bookによると、ユダシティはこれまでに総額1億6,300万ドル(約180億円)の資金を調達している。株主にはドイツのメディア・コングロマリットであるベルテルスマンやアンドリーセン・ホロウィッツ、チャールズ・リバー・ベンチャーズ、ドライブ・キャピタル、グーグル・ベンチャーズなどが含まれる。

企業価値は既に1000億円以上

昨年11月に行われたラウンドでは、評価額10億ドル(約1100億円)で1億500万ドルを調達している。スランは、以前スタンフォード大学で人工知能に関する無料のオンライン授業を実施したところ、190か国から160万人が受講した経験がきっかけとなりユダシティの設立を思い立ったのだという。その時の授業でトップの成績を収めた受講生たちはスタンフォードの在校生ではなかったという。彼がユダシティを立ち上げた当初、周囲の反応は冷ややかで、グーグル時代に自動運転車の開発をリードしていたときと似ていたという。

スタンフォード大学で行った人工知能のオンライン授業を受講した生徒の多くは兵士や母親だった。「多くの人がスタンフォード大学に通うことができない。我々がシリコンバレーにおける新しい大学になる」とスランは語る。

オンライン教育の分野には多くの競合がひしめいている。「コーセラ(Coursera)」は金融やテック業界の大手企業と組んでMOOC(Massive Open Online Course、オンラインで公開された無料講座)を提供している。コーセラの場合、授業は無料で受講できるが、学位を取得したい場合は約600ドルの費用を支払う必要がある。edXの「XSeries」はマサチューセッツ工科大学が中心となって設立され、ウォルマートやP&Gなど50社と提携している。

リンクトイン等もオンライン教育に参入

他にも無料で受講できる「Khan Academy」やリンクドインが運営する「Lynda.com」などがある。Lynda.comは、月額25-40ドルで利用することができる。ニューヨークに本拠を置く「General Assembly」はこれまでキャンパスでの講義が主体で、アンドロイド開発やデータサイエンス、ウェブ開発などのコースを提供していたが、最近になってオンラインコースを立ち上げた。例えば、13週間でウェブ開発について学習するフルタイムコースは1万3,500ドルで受講することができる。キャンパスでのオフラインの授業の料金は、12週間コースが約1万4,000ドル、10週間のパートタイムコースは3,000-4,000ドルとなっている。

競合の参入が増える中、スランはユダシティにとって最大の課題はユーザーから信頼されるブランドを作ることだと話す。「大学の学位を取得することが正しい道だという考えが社会には根強く残っている。我々は、タクシー運転手や教育者でありながら医師免許も持っているようなマルチな才能を育てていきたい。テクノロジーの進化によって、学位を取得することが従来ほど意味をなさなくなりつつある」と彼は話す。

編集=上田裕資

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