米の銃所有支持派、20ドル紙幣の女性肖像画を歓迎する理由とは

ハリエット・タブマン(Chip Somodevilla / Getty Images)

ジェイコブ・ルー米財務長官は4月20日、同国の新たな20ドル紙幣の肖像画にハリエット・タブマン(1822~1913)を起用すると発表した。タブマンは自らも奴隷出身で、南部の奴隷州の黒人たちが雇い主らの下から逃れるのを支援した黒人女性だ。

財務省の発表を受けて、活気付いているのが同国の保守派と銃所有の権利を擁護する人たちだ。なぜなら、タブマンは自由を獲得するために闘った人物であり、銃所有者だったからだ。奴隷たちが北部の州やカナダへと逃げるのを助ける際、護身のために拳銃を使っていた。そのほか、南北戦争で北軍と戦ったときにはライフル銃を使用していた。

南北戦争中のタブマンの大胆な行動は、映画のストーリーにもなりそうだ。ケイト・クリフォード・ラーソンは著書のタブマンの伝記の中で、「ハリエット・タブマンは(黒人奴隷たちの)救出に向かう際、主に“奴隷狩り”をする者たちからの護身用として、小型の拳銃を携帯していた。だが、その拳銃は同時に、おじけづいて雇い主のところへ戻ろうとする奴隷たちを勇気づけて思いとどまらせ、ほかの奴隷たちが危険にさらされるのを防ぐためのものでもあった。南北戦争のときには、タブマンは狙撃銃(マークスマンライフル型)を使っていた」と記している。

タブマンは自由の権利を信じただけでなく、それを自ら手に入れた女性だ。反奴隷制を掲げて1854年に共和党が結党された際には、同党の一員となった。そして、奴隷制度廃止論者ジョン・ブラウンの支持者であり、1859年に起きた「ブラウンの蜂起(ハーパーズフェリー襲撃)」では、連邦武器庫の襲撃、占拠を計画していたブラウンに同行する仲間たちを集める活動に協力した。

現在、米国の都市部の住民たちにとっては、合衆国憲法修正第2条で認められた権利の大半は、銃規制法によって封じ込められているともいえる。今回の発表を受け、銃所有の権利擁護派の間には、タブマンの行動は「自由のための手段が使われた素晴らしい例だ」「紙幣にはタブマンが銃を構えている写真を使うべきだ」との声もある。

ただし、ルー長官によれば、この決定において同氏が特に影響を受けたのは、「リーダーシップ、民主主義への参加において我々の手本となる人物だ」とのタブマンに関する子供たちの意見だ。また、長官は今のところ、新しい紙幣の流通開始の時期を明らかにしていない。

大統領は「裏」へ

一方、現在の20ドル紙幣に描かれているアンドリュー・ジャクソン大統領の肖像画は、裏面に「移動」することになった。

民主党の前身となる党を創設した人たちが支持したジャクソン大統領は、すでに米国民を引き付ける魅力を失っているとされている。その理由のひとつが、最高裁の判決を無視して先住民チェロキー族を居留地に強制移動させた「涙の道(Trail Of Tears)」だ。さらに、大統領は多数の奴隷を所有していたことでも知られている。

編集 = 木内涼子

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