『選択の科学』の教授が語る「女性が働く」という選択肢

シーナ・アイエンガー コロンビア大学ビジネススクール教授/アジア女子大学支援財団理事メンバー(写真:藤井さおり)


谷本:日本では、これだけ女性の雇用均等などが叫ばれているのにもかかわらず、家庭や職場において「女性は控えめでいなければならない」「家事も担当しなければならない」という考え方がいまだに強く残っています。たとえ自分の能力に自信があり、仕事ができる女性であっても、同じように考える傾向があります。このことについて、アイエンガー教授はどのように思われますか。

アイエンガー:男性のみならず、女性自身も、“女性の方が男性よりも子育てがうまい”となぜか信じ込んでいます。女性のほとんどは、女性の義務のようにさえ感じている。これは、日本だけではなく、他の国にも共通しています。しかし、子育てにおいて女性の方が男性よりも優れているという科学的な証拠はどこにもありません。

もう一つ、母親が仕事をせずに子育てに専念すると子どもがよく育つ、と誤解をしている人もたくさんいます。しかし、私が世界25か国、5万人を対象に調査を行ったところ、実は子どもはそこまで母親から気にかけられることを必要としていないことがわかりました。

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お母さんがいなければ友達と過ごすでしょうし、保育園や幼稚園、学校の先生など、母親以外にも自分を気にかけてくれる人がいるからです。また、母親が働いている子どもは、いろいろなことに積極的に挑戦していく傾向が高いのです。

もちろん、子どもは母親から愛されなくても大丈夫というわけではありませんし、母親が子どもをネグレクトしてもいい、という意味でもありません。大切なのは、子どもが成長して生産的な市民になるには何が必要なのかを考えること。では、それは何かというと、まずは安全な環境で育つこと。愛されていると感じること。そして、刺激を受けることです。

これらの要素一つ一つを分解してみると、全てをお母さんだけから受ける必要はなくて、お母さんを含むいろいろな人から分散して受け取ってもいい、ということなのです。
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構成=吉田彩乃 衣装協力(谷本)=HIROKO KOSHINO PREMIER

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