ザッカーバーグは3月20日、中国共産党の思想統制部門トップ劉雲山(リウ・ユンシャン)と会談し、フェイスブック解禁に向けてのアクションを起こした。彼はスモッグが立ち込める北京をマスク無しでジョギングし、中国への思いをアピールした。報道によると、劉雲山は「フェイスブックは中国企業と経験を共有し、人々がインターネットの発展の恩恵を受けられるよう協力してほしい」と発言したという。
中国経済の低迷が解禁を後押しする可能性
中国経済の減速が、フェイスブックの進出の追い風になるかもしれない。中国政府はバイドゥ(百度)やテンセント(騰訊)などのネット企業の海外進出を後押ししており、各業界の主力企業の海外展開を望んでいる。しかし、フェイスブック解禁の実現は難しいという声もある。
「中国の政策立案者は、確かに世界に打って出ることができる企業の支援にフォーカスしている。しかし、自国の市場を海外企業に譲る気は全く無い。特に政府が情報統制を進めたいソーシャルメディアを海外企業に開放することはあり得ない」と北京の市場調査会社Marbridge Consultingのマーク・ナトキンは指摘する。
31歳のザッカーバーグは、厳しい状況の中で打開策を探っている。彼は昨年、米中インターネット産業会議のためにシアトルを訪れた際、中国の習近平主席と面会し、中国語で言葉を交わした。ビジネスマンのザッカーバーグは、取引のツボも知っているだろう。フェイスブックへのアクセスを認めさせようと躍起になるのではなく、VRヘッドセット「オキュラスリフト」のような政府の検閲とは無関係の商品の進出を優先するかもしれない。
しかし、いずれにせよどこかの時点で、フェイスブックは中国市場へのアクセスと引き換えに、政府の検閲に協力するのかという難しい選択を迫られることになる。5年前に中国から撤退に追い込まれた、グーグルと同じ立場に追い込まれるかもしれない。
メディアや現地アナリストによると、ヤフーはユーザー情報を定期的に中国政府に提供することで事業を継続し、ビジネスネットワーキングサービスのLinkedInは自己検閲を行っている。
北京のエンジェル投資家ダニー・レビンソンは言う。「フェイスブックはサービスの解禁について中国から譲歩を得ることはできないだろう。フェイスブックが中国の意志に屈服するかどうか、決断を下すしかない」