トロイ(Trojan)のコンドームは、アマゾンが小型のネットショッピング端末、「ダッシュボタン」で提供している77品目のうちの一つだ。同社は日常の必需品の買い方を変えようと、昨年からこの「ダッシュボタン」を使った「自動補充サービス」を開始した。アマゾンのモバイルショッピングアプリを使い、自宅のWi-Fiネットワークに接続して使用するボタンで、クリックごとに新たに商品を受け取ることができる仕組みだ。
このプログラムは同時に(そして、恐らく意図せずに)、よくあることながら誰もあまり話題にしない、買い物をする上での小さな悩みに対応してくれることになった。店舗やネット販売でもきまりが悪くて買いづらい商品を簡単に、そして誰にも知られず、購入することができるのだ。対象の商品には、プレイテックス(Playtex)の生理用品といった女性向け製品のほか、失禁用製品なども含まれている。
インディアナ大学ケリー経営学部のケリー・ハード助教(マーケティング学)によると、「消費者心理に関しては、羞恥(しゅうち)心の点にほとんど注意が向けられてこなかった」。
「消費者行動の点でみると、恥ずかしさは一部の製品やサービスの購入を思いとどまらせたり、購買習慣を変えさせたりする可能性がある。それは、ネット販売でも同様だ。私たちはその商品を買おうとする行動そのものに、恥ずかしさを感じるのだ」という。
消費者心理が専門の心理学者、キット・ヤーロウによれば、コンドームでもタンポンでも、アマゾンのダッシュボタンを使えばネット販売より購入プロセスを簡素化することができ、羞恥心が緩和されると考えられる。
ヤーロウはフォーブスの取材に対し、「私たちをほかの誰より厳しく批判するのは、私たち自身だ。そのため、弱点といえるものを想起させるようなことは何でも、避けたいと思ってしまう。潔癖さを持つ私たち人間は、体の機能、体液なども弱点として受け止めるのだ」と話した。「だらしなさや乱雑さを思わせる人間の機能に関わることを避けられるなら、消費者はどのような購入方法でも歓迎するだろう」という。
一方、ハード助教はダッシュボタンがそうした感覚をどれだけ拭い去れるのかについて、「我々の研究によれば、消費者は一人でいても常に、こうした商品の購入に恥ずかしさを感じる」「ダッシュボタンを使ってもなお、消費者の羞恥心は消えないのだ。だが、パソコンのディスプレイの前に座っているときほどの恥ずかしさは感じないかもしれない」と述べている。さらに、今後どのような販売データが得られるかについては、「興味深い」との見方を示した。