感染症薬の専門メーカーである塩野義製薬の手代木功社長は、国内の感染症薬の現状について、こう説明する。
「感染症治療薬の開発の歴史は、がんなど他の病気と比べると古く、価格は当時からほとんど変わっていません。ビジネスとしての見通しが非常に難しいことなどから、多くの製薬企業がかなり早い時期に撤退しています」
日本では戦後、GHQによる占領下で公衆衛生の改善が進み、その後も政策的に取り組んだことで、寄生虫などによる感染症などはすでに制圧されている。国内の需要がなくなったのだから、製薬会社の関心がほかに移るのは自然な流れだろう。
ただ、人やモノがグローバルに移動する現在、国外から感染症が入り込む可能性は十分にあるし、実際に14年には東京でデング熱の感染が確認されている。手代木社長は言う。
「既存の感染症もあれば、新たな感染症もあり、その闘いには終わりがありません。世界のどこかで大流行したときのために、誰かが継続して取り組まなければばなりません」
一方、第一三共の中山讓治社長は、感染症対策は製薬メーカーならではの社会貢献と捉えている。「製薬会社には創薬の過程で得たたくさんの知見があります。それを生かした社会貢献をしたい」
アステラス製薬の畑中好彦社長は、協業のメリットに期待する。
「GHITの取り組みを通してパートナーと協働することで、当社が単独ではできなかった大規模な活動が可能になります。そこで得られた知見やネットワークを、今後の事業活動に生かしたいと考えています」