小型デバイスを装着したトイレで用を足すだけで、病気の兆候がわかる。
そんなサービスを手掛けるヘルスケアベンチャー「SYMAX」が、昨年11月に行われた医療カンファレンス「Health 2.0 Asia - Japan」のピッチコンテストで優勝した。中心となっているのが、鶴岡マリア(26)だ。
センサーで排泄物の解析を行い、アプリを通して利用者にフィードバックする。第一歩として、商業ビルや介護施設での導入を目指す。「どんな面倒臭がり屋でも、能動的にならずに、病気を早期に発見できる。それが目標です」
なぜ、トイレなのか? 答えは、この「能動的にならずに」という鶴岡の言葉にある。
きっかけは、母が病気にかかり、苦しむ姿を間近で見てきたことにあった。母は後遺症にも悩まされた。小学生だった鶴岡は、それは「どうしようもないこと」として、消化するほかなかった。『何もできない』『仕方がない』。当時はそれで終わってしまっていた」
20代に入り「サムライインキュベート」に勤務後、IT開発などの仕事をフリーランスで行っていた頃、「自分が欲しいものをつくりたい」と考えるようになる。すると、心のどこかで燻っていた思いが蘇ってきた。
病気は、本当に「どうしようもないもの」だったのだろうか? 調べれば、調べるほど「できることはあった」という確信に近づいた。
血液、ゲノム、尿......。つくば市にアパートの一室を借り、検証実験に力を注いだ。血液をつかった実験には特に力を入れた。簡易システムをつくり、友人にこう声を掛けた。「一滴の血だけで、家でがんのチェックができる。やってみて」
でも、友人は行動を起こしてはくれなかった。