NY-東京が53分 超音速旅客機「Skreemr」、実現への夢

image by Ray Mattison / courtesy of Charles Bombardier

想像してみよう。ニューヨークで乗車した列車が、途中でジェット旅客機に変身すると、わずか30分足らずでロンドンに到着するのを。マッハ10のスピードで飛行するハイブリッド旅客機「Skreemr」なら、そんな夢を現実に出来る。

インダストリアル・デザイナー、チャールズ・ボンバルディア氏とレイ・マティソン氏がデザインしたコンセプト機Skreemrは、陸上をホバリングするロコモーティブが、海に到達するやジェット機に姿を変え、機体に装備された電動のマグネティック・レールガン発射装置で離陸。

液体酸素燃料ロケット2基を利用してカタパルト方式で発射するや、超音速で雲の間を突き抜ける。ある速さに達すると、スクラムジェットエンジン(Supersonic Combustion Ramjet Engine/超音速燃焼ラムジェットエンジン)に点火、液体水素と圧縮酸素を燃やし時速7,672マイル(時速12,347キロ)で機体を更に加速させ、空の彼方へ運ぶ。その速度は、あの超音速旅客機コンコルドの6倍にも達する。

エックスコア・エアロスペース社が開発したロケットプレーン型宇宙船「リンクス」と、自身が日本で乗った新幹線から着想を得て考案された、この新たなコンセプト機Skreemrは、機体が生む衝撃波の音が、金切り声で叫ぶアイルランドの妖精バンシーを思わせるところからネーミングされたと、ボンバルディア氏は説明した。「Skreemrはまったく新しいタイプの乗り物です。トレインクラフトと呼んでもいいかも知れない」

Skreemrが飛行するのに理想的な高度は、上空4万フィート(約1.2万メートル)から6万フィート(約1.8万メートル)の間だとボンバルディアは言う。通常のジェット旅客機の巡航高度よりはるかに高く、そこは大気の温度が華氏マイナス70度(-57℃)に達する世界だ。

しかし、75人を搭載可能なこのコンセプト機をすぐにも飛ばせるかというと、そうでもなさそうだ。

変化する大気の状態や地形など、様々な条件を考慮に入れた上で最適な形状や、機体の急加速で乗員が体験することになる驚異的なGをどうやって最低限にコントロールするか、といった未決定の部分が遺されていることを認め、ボンバルディア氏は説明した。
「それ自体が生む衝撃波の為、超音速機は低い高度では飛ぶことが出来ないのです」
スクラムジェットエンジンの燃焼波をどうやって安定化させるかも重要な問題点だと言う。

ボンバルディア氏は続けて告白した。「それに、このプランで発生する圧倒的な熱、圧力、構造的ストレスに耐えうる機体の材質の開発状況についても、未だ確信は持てていません」

さらに、Skreemrの実現にはべらぼうな費用が想定されるのは言うまでもない。ボーイング787の開発にかかった320億ドル(約3兆7670億円)など、はるかに上回る金額だ。

「このコンセプトは、何よりも先ず将来可能になる空の旅について人々の想像力を刺激し、夢を与えるものです。私たちが生きている間にSkreemrの完成形を見ることは出来ないかもしれませんが、その先の将来にはきっと完成するでしょう」とボンバルディア氏は熱く語った。

Skreemrのフライト時間:
ニューヨーク → ロンドン (3,459 マイル/約5600キロ) → 27 分
ニューヨーク →パリ(3,625 マイル/約5800キロ) → 28 分
ニューヨーク →東京(6,737マイル/約1万800キロ) → 53 分
ニューヨーク →上海 (7,364マイル/約1万1800キロ) → 58 分
ニューヨーク →香港(8,040マイル/約1万3000キロ) → 63 分
ニューヨーク →シドニー (9,929マイル/約1万6000キロ) → 77 分

※離着陸時の上昇と下降に要する時間は含まない。

編集=上田裕資

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