ビジネス

2016.02.26

我慢比べも限界か 「ゾンビ化」する米石油会社

Cardaf / Shutterstock

一部の石油会社は、死の床にある。そして銀行は、病から逃れることができない──問題を抱えた石油会社に対する銀行の融資額が増加すると同時に、借り入れている石油会社の複数が、破たんに近づいている恐れがある。

これらの石油会社に財務の改善が必要であることは言うまでもなく、米連邦破産法11条の適用を申請する可能性もある。与信限度額の上限まで借り入れを増やさざるを得ない状況に陥っているのだ。

オクラホマ州のタルサに本社を置くミッドステイツ・ペトロリアムは先ごろ、サントラスト銀行から2億4,900万ドル(約278億円)を借り入れ、与信枠を使い切った。テキサス州ヒューストンが拠点のリン・エナジーもまた、ウェルズ・ファーゴから9億1,900万ドル(約1,027億円)を借り入れ、40億ドルの与信枠を使い切った。

だが、ヒューストンのある銀行関係者は、これら石油会社への融資について、さほど心配はしていないと語る。回転信用枠から引き出した借入金は通常、優先担保付きであり、融資先の企業の資本構造の中でも優先順位の高い有担保債務だからだ。

しかし、だからといって常に安心していられる訳ではない。一年ほど前、テキサス州フォートワースが本社のクイックシルバー・リソーシズは他の石油会社に先駆けて連邦破産法11条の適用を申請。当時の負債額は23億ドルに上った。そのうち回転信用枠からの借入金は2億7,300万ドルだった。

各銀行は、経営状況が厳しい石油会社への融資が増えていることを認めている。ウェルズ・ファーゴは2月上旬、石油・ガス会社への融資総額が420億ドル(融資予約を含む)に上り、未回収分が174億ドルに上ることを明らかにして投資家らを驚かせた。

米金融規制当局によると、石油・ガス関連企業への融資総額は2015年度末時点で2,765億ドル。融資のうち、回収に注意を要する債権の「S査定(substandard)」と、最終の回収または価値に重大な懸念がある債権の「D査定(doubtful)」、回収不可能または無価値な債権の「L査定(loss)」に分類されたのは、融資総額の15%にあたる340億ドルだった。この割合は、前年の3.6%から急増している。

米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は先ごろ、石油・ガス会社への融資額が多い複数の銀行の格付けを引き下げた。投資家らの間でも、すでに不安が高まっている。これら銀行の株価は、ここ3か月ほどで平均30%下落している。

こうした状況の悪化がさらに1年続けば、石油・ガス各社の株価も暴落することになるだろう。2008年の金融危機の再来を招く可能性があるとまではいえないが、石油会社への融資について、銀行に二の足を踏ませるには十分なはずだ。

編集 = 木内涼子

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