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2016.01.21 06:00

一世を風靡したウォルマートのビジネスモデル 殺したのは誰?

Kathryn Scott Osler / Getty Images

Kathryn Scott Osler / Getty Images

ウォルマートは30年以上にわたって、米国の小売業界を牛耳ってきた。大規模な店舗と常時安売りの業態は、近隣の小規模スーパーマーケットや商店にとって到底太刀打ちできるものではなく、これらの店はウォルマートの進出から短期間のうちに閉店に追い込まれていった。

こうしてウォルマートは、売上高が5,000億ドル(約59兆円)近くに上る大企業に成長。その他各国の経済成長も圧迫してきた。しかし、その同社のビジネスモデルについては数年前から、死期に向かい始めているとの観測が出始めていた。

ウォルマートは先ごろ、多数店舗の閉鎖を発表。これまでは「資産」だった同社の店舗が、「債務」に一変したことは明らかだ。同社のビジネスモデルを死に追いやった原因は何か?疑われる要因はいくつもある。

そのリストのトップに挙げられるのが、インターネット通販大手のアマゾンだ。地方部に設置した複数の倉庫と適切な配送方法、薄利を基盤に運営する同社は、ウォルマートに対する価格優位性を維持することができた。さらに、スマートフォンやタブレットの普及が影響したことは言うまでもない。

そして、ウォルマート敗北の要因の第2位は、全米で実施された最低賃金の引き上げだ。そして、同社の各店舗で多発した労働者による抗議活動だ。従業員らによるデモなどは、ウォルマートがかつて誇った輝かしい業績、「安価な労働力」も土台から覆した。

これらに次ぐ要因が、会員制の倉庫型卸売・小売チェーン、コストコの台頭だ。コストコは、経済的に多少の余裕があるウォルマートの顧客を大量に奪った。その結果、ウォルマートの顧客は所得の低い層に限定されることとなったのだ。最近の調査では、ウォルマートで購入する客の中には、生活保護その他の行政からの手当てに頼る人が多いことが分かっている。

もちろん、ウォルマートはこれまで、こうした要因に打ち勝つための努力を払ってきた。特にアマゾンに対抗する措置として、インターネット事業の拡充のために多額の資金を投入。倉庫を設置し、電子商取引会社を次々に買収した。同社の電子商取引関連の技術開発部門として設立した@ウォルマートラボ(@WalmartLabs)は2013年、以下の目的でスタートアップ4社を買収している。

トービット(Torbit) ─サイトの高速化
インキル(Inkiru) ─ビッグデータの解析・予測
ワンオプス(OneOps) ─クラウドコンピューティング
テイスティラボ(Tasty Labs) ─アプリケーション開発

さらに同社は昨年、商品検索サービスのアドケミー(Adchemy)も買収した。

だが、これら一連の戦略の実施は、ウォルマートにとっては遅すぎた。同社の従来のビジネスモデルは、アマゾンと最低賃金引き上げ、コストコをはじめとするさまざまな要因によって、とうに息絶えている。

編集 = 木内涼子

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