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ハードウェア及び半導体メーカーについて執筆

Sergey Nivens / Shutterstock

著名なヘッジファンド・マネージャー、ジョージ・ソロス氏は静かに警告を発している。1月7日、ソロスは「現在の市場の混乱は2008年のリーマン危機を思い出させる」と語った。

その日、中国市場の下落は制限幅の7%に達し、取引は停止。原油価格は18カ月連続の下落で、1バレル33ドルとリーマン危機の際を下回る水準となった。S&P 500指数は2.3%下落、年初から5%の値下がりとなった。――ソロス氏が正しいのかもしれない。

世界経済の動向と結びついている原油、金属、農産物など多くの商品価格をみると、かつて成長をけん引した新興市場の景気後退が予測される。大企業、中小企業を問わず決算にも影響が出るだろう。現状の価格が続けば、石油業界では確実に連鎖倒産が起き、鉱山、運輸、部品メーカー、商社などへ波及するだろう。

市場の値動きは荒く、投資家にリスク回避の動きが強まり、信用度を反映した急速な金利差の拡大は、低格付けでの資金調達を難しくしている。
複雑だが高率配当の、共同投資事業体MLP(マスター・リミテッド・パートナーシップ)や、新興企業金融のBDC(ビジネス・ディベロップメント・カンパニー)などへの投資家は、この半年で厳しい教訓を得ることになった。

昨年は集中的な投資を行ったり、過度のリスクをとったりした多くのヘッジ・ファンド投資家にとっては最悪の年だった、エネルギー業界の苦境から、利益を上げようとした個人向けの証券会社も大きな損失を出した。こうした例はまだ続いている。

昨年12月、米金融当局は金利を引き上げたが、既にその際に、20世紀の現代美術や富裕層向け不動産といった資産には値下がりの兆候が表れていた。市場の混乱が続くようなら、多くの投資家の損失はさらに拡大するだろう。

しかし、実体経済については、パニックに陥る必要はない。今回の株・商品価格の下落局面では、個人レベルでの行き過ぎた行動はほとんどなく、「普通のアメリカ人」は動揺していない。

貯蓄との対比で家計の負債をみると、過度な借り入れは引き続き減っている。セント・ルイス連邦準備制度によると、現在の貯蓄率は2004-07年のバブル期に比べるとほぼ倍、そしてクレジットカードの負債は、リーマン危機後初めて上昇を始めた。

クレジット審査の指数、FICOスコア(平均680程度)をみると、大多数の住宅購入者は780を超えている。サブプライムローンも全米的な住宅市況の回復に吸収されてほとんど残っていない。

住宅バブルの火付け役となった最初だけ低金利が適用されるローン、金利だけを支払うローン、借入限度の比率が次第に上がっていくローンなどが再び伸びていることもない。全米の住宅価格も危機前のピークを下回っている。シャーロット、シアトル、デンバー、ボストン、サンフランシスコ、ニューヨークといった好況が続く都市では危機前のピークに近付いたり、超えたりしているが、バブルという感はない。

商品、株、ジャンク債が下落している理由がなんであれ、それは実体経済とは関係がないのだ。

実際、このところの商品価格の下落で、ほとんどの米国民は得をしているのではないだろうか。全米自動車協会(AAA)によるとガソリン価格は一ガロン(3.8リットル)当たり2ドル(236円)を割った。前年比で20%の値下がりで、その分はほとんどが貯蓄に回るか、ショッピング、旅行などに充てられるだろう。このほか、金属や小麦、トウモロコシなどの下落分も貯蓄増につながっていく。

多分、米国人は株式市場へ過剰に投資しているのだろう、現在、株価収益率は循環変動調整後で24.63倍と、歴史的平均の16倍をかなり超えている。しかし、2000年前後のIT(ドット・コム)バブルの時代の44倍には及ぶまでもなく、2006年のクレジット(住宅)バブルの時期に比べても低い

とはいえ、ジョージ・ソロスが2008年の危機の兆候が見えると言い、原油価格が1バレル33ドルとなっているだから、警戒を怠ってはいけない。注意すべき6点を挙げてみた。

1. 自分のポートフォリオをチェックする
大半の投資家が行うべきことは、市場の価格変動には耳を傾けず、何もしないことだ。しかし、これは株価指数連動ファンドやその他の比較的安全な資産を長期保有している場合に限られる。もし、既にファイナンシャル・マネージャーを雇っているのなら、何を買っているのかに気を付けることが大切。彼らは高利回りの株や、投資信託(ミューチュアル・ファンド)、ジャンク債に目を向けがちだからだ。

2. デフレ
利上げ決定に関連して金融当局は、デフレ的な傾向は弱まり、2%程度の正常なインフレが再び始まると確信的に述べた。しかし、当局の分析には飛躍があり、この利上げの決定そのものが「間一髪」だった。当局への批判には既にいくつかの根拠がある。商品価格は下落を続けており、10年物米国債の利回りは利上げ前よりも大幅に低下している。インフレどころか、経済への大打撃となるデフレの懸念が強まっている。注意が必要だ。

3. 雇用統計
今後の統計で苦境の続く石油関係や、経済の推進役の小売り、サービスで、予想以上に雇用が悪化すれば、金融当局の見通しが誤っていたことになるだろう。

4. 銀行の収益
巨大銀行は改革されており、レバレッジを効かせた貸し出しや住宅バブルを引き起こすようなリスクの大きな取引を行うことはない、というのが現在のコンセンサス。しかし、大多数のアナリストは、石油価格が早期に回復せず、企業が倒産に追い込まれれば、巨大銀行も損失に見舞われると予想している。巨大銀行の融資では、エネルギー分野4%占め、テキサスやルイジアナのような州では、これが20%にものぼるからだ。

5. 人民元の下落
中国の株式市場の下落は、各紙の一面を飾るようになっている。中でも人民元の下落は大きな懸念材料だ。急激な為替の変動は政治による統制が不可能になりつつあること、過剰債務や流動性の問題が予想よりも深刻なことを示している。

6. 国際企業の収益
企業は国際経済の急激な変化にさらされており、商品相場下落の影響がエネルギー業界以外にも広がれば、多くの雇用が失われる可能性がある。また、輸出採算を悪化させるドル高にも対抗しなければならない。ドルは金融危機後の高値に近付いており、金利引き上げによるドル高は企業に二重の意味で打撃。守りの姿勢に入る企業も出てくるだろう。

編集=上田裕資

 

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