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Frazer Harrison / Getty Images

「スター・ウォーズ」シリーズの最新作「フォースの覚醒」が公開され、映画界に数々の伝説を生みだしてきたジョージ・ルーカスの評価はうなぎ上りだ。観客は創造力あふれる製作プロセスに魅了され、彼を天才と呼ぶ。しかしここで我々が忘れがちな真実がある。それは、映画製作はビジネスに深く通じるところがあるということだ。どちらの現場でも、強力なリーダーシップと他者を惹きつけるビジョン、そしてなによりも、優秀なチームメンバーのモチベーションを高め一つのビジョンに向けて最大限の能力を発揮させるマネージメント能力が求められる。そういった意味においても、ジョージ・ルーカスは類稀な才能を証明したといってよい。

ルーカスフィルムは、社員間の”コラボレーション”を売りにする今日のデジタル分野の職場環境と比べても、極めて協調的な雰囲気を醸し出している。ルーカスフィルムでは時に部門の垣根を越えて働く。たとえば、コンピュータ部門がゲームの特殊効果を専門にする部門と協働するといった具合だ。ルーカスフィルムにおいてVFXなどを手掛けるスタジオであるインダストリアル・ライト・マジックでは、社員に特定の仕事や分担を与えるのでなく、一人ひとりの社員が必要性や仕事の空き具合によって他部門の間を自由に行き交いながら様々なプロジェクトに取り組むことが求められる。そうすることによって、さもなければ出会う機会のなかったような多様なバックグラウンドや経験を積んだ社員とともに働く機会が生まれる。このような職場環境を実現するには究極のフレキシビリティと寛容さが不可欠だ。大胆さも求められるが、それはルーカス氏のお家芸だ。いつもスケジュールばかりに気をとられているような職場環境でこのようなマネージメントを実現するのは至極困難だ。

カリフォルニア州にあるルーカスフィルム本社が入るスタジオ・スカイウォーカーランチでは、社員は密接に連携しながら仕事をする結果、気持ちが通じ合い、お互いの創造力について心の奥底から深く理解できるようになるという。アカデミー賞を受賞したフィル・ティペット氏はルーカス氏の下で働いた経験を振り返りこう語った。「映画の歴史から始まって、自分たちが何に魅了されてこの世界に入ったのかまで、まるでテレパシーのように伝わり、それを試金石のようにお互いが共有していたよ。たとえば話し合いの中で、だれかが昔の映画の一場面をちょっと引き合いに出すだけで、みんなそれが何を意味するのかを理解できたりした。言葉で説明していたら何十時間もかかるようなことを、みんながテレパシーのように理解できる環境だったよ」。

「インディー・ジョーンズ/若き日の大冒険」のプロデューサーをつとめたリック・マッカラムはマイケル・ルビンとの対談で、ルーカス氏の社員はみんな、世間一般の職場の人間関係とは比較にならないほどの個人的なつながりを築き上げ、その絆は生涯のキャリアを通じて重要な意味を持つものだと語った。スカイウォーカーランチでは「みんなが共に働き、パーティーをし、執筆をし、アイデアを出し合うことができる真の居場所だった。あそこで一カ月丸々過ごすこともあった。毎晩酒を飲み、翌朝8時には脚本会議に出て、それから夜8時までノンストップで仕事をしたり… まるで映画製作キャンプだね」。

ジョージ・ルーカスのマネージメントがすごいのはコラボレーションだけではない。
創造力と進化し続けるテクノロジーに対する「シンプル」なアプローチこそ、ルーカス氏の真骨頂だ。スカイウォーカーランチと現代におけるビジネスを比較すれば、それは一目瞭然だ。多くのビジネス、いわゆるクリエーティブ産業と称されるビジネス領域においても、何かを生み出す過程に科学的な要素が不可欠となってきている。認知科学から脳科学、消費者行動心理学や行動経済学まで、ビジネスに関する決定にあらゆる研究データが用いられている。人間よりソフトウェアが当てにされ、インターネットの1クリックが人間の直感や感性より重宝される傾向にある。2015年に公表されたレポートによると、多くの企業はマーケティング分析に多額の資金をつぎ込んでおり、今後数年でその額は更に70%増える見込みだという。

そのようなビッグデータの効果を否定するのは容易でないが、それによって失うものがあるのも事実だ。現代の、テクノロジーに依存したマネージメントは、人間の発想力を活かしていくのに最善の方法だろうか?

ルーカス氏はテクノロジーの力を信じ映画製作にその技術を応用したが、だからといってルーカスフィルムで人々が映画を作り上げるためのマネージメントをテクノロジーに依存したのでは決してない。

1980年代後半から1990年代にかけてルーカスフィルムのゲーム部門で活躍したロン・ギルバート氏に取材したとき、彼は今日のビデオゲーム制作現場について、消費者の好みや傾向などをデザインに活かすなど消費者リサーチに主眼が置かれていることを指摘した。そのうえでギルバート氏は、ルーカスフィルムでの製作過程はそれとはまるで異なり、より純粋で、消費分析にとらわれず、想像力の働くままに自由な感性を活かす土壌があったと振り返る。そのような現場では、とにかくおもしろくて人と一風違うアイデアが次々に生まれ、そのように突き進んでOKなんだという雰囲気を皆が共有していたという。そのようなやり方は、時に高くついたり、遠回りになることもあるだろう。だが、大ヒットというのはそうして生まれるものだ。シリコンバレーの大企業も、マーケティングや分析だけで大成功を成し遂げたのではない。確かにフェースブックやグーグル、アップルも、ビッグデータなくして今日の成長はなかっただろうが、一方で成功の原点は個人レベルの力からはじまり、起業家精神、人とは違うことをしようというチャレンジ精神だったことを忘れてはいけない。

コラボレーションと社員の創造性を伸ばすマネージメントによって、ジョージ・ルーカス監督は後世に残る名作とテクノロジーを生み出した。今冬のホリデイシーズンに「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」を見ながら、魔法のようなマネージメントなしにこれらの大作シリーズは成しえなかったということに思いを馳せてみるのもいいだろう。

編集 = Forbes JAPAN 編集部

 

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