炭素税とは化石燃料に税金をかけ、石油関連製品の価格を引き上げることで需要を抑制し、結果的にCO2排出量を抑えるという政策手段だ。
マスクは12月上旬にパンテオン・ソルボンヌ(パリ第1大学)で行った約1時間のスピーチで、クリーンエネルギー資源への大規模移行の切り札として、炭素税の導入を提言した。マスクはAGUの会議でも大勢の科学者を前に、「今の化石燃料の価格水準は、間違った行動を奨励しているようなものだ。果物や野菜に高い税率を課し、タバコや酒に低い税率を課すとしたら、筋が通らないだろう。しかしエネルギーに関してはその問題が起きている」と持論を展開。
化石燃料の生産者がその消費の結果に責任を負わないのは、“隠れた補助金”を受け取っているのに等しい悪質な行為だと糾弾した。マスクは炭素税の税収を風力や太陽光、原子力などのエネルギー開発に活用すべきと主張する。今のところ、シェールガス革命の恩恵を受けている米国でこのアイディアが実行される可能性はほとんどないが、マスクは「ユタ州とネバダ州の一角にソーラーパネルを置いたら、米国全体のエネルギーを賄えると」と語り、ソーラーパワーと蓄電池で世界の電力を賄う可能性について強気の姿勢を崩さなかった。彼は原発という選択肢を排除していないが、太陽電池に肩入れしているのは明らかだ。
どんなトピックであれ、マスクは業界のオピニオンリーダーとしての立場から発言することが多い。しかし実際、彼は太陽電池メーカーSolarCity(ソーラーシティ)の会長として太陽光発電に向け多大な投資をしており、彼が起業したテスラモーターズは家庭用ソーラー蓄電池の開発も手掛ける。つまり、マスクがエネルギー問題の解決策として太陽光発電に言及するとき、バイアスが存在しないはずはないことは、付け加えておきたい。
現実には、再生可能エネルギーへの完全な移行は砂漠にソーラーパネルを置くような簡単なことではない。エネルギーをどう貯蔵するのかという問題のほか、送電についても考慮する必要がある。砂漠で蓄えられた電力の全てを必要な時に必要な場所に送るのは、決して容易ではないだろう。